TOP ライフスタイル 絶品キムチも会話もおかわりしたくなる。大阪コリアタウンの名物オモニ【あんな、ひと】

絶品キムチも会話もおかわりしたくなる。大阪コリアタウンの名物オモニ【あんな、ひと】

「あんなぁ」と、明日誰かに伝えたくなる人にスポットライトを当てて紹介する「anna」の連載企画「あんな、ひと」。第14回目となる今回は、今や大阪の大人気観光地である大阪コリアタウンに店を構える「成田商店」の名物であり、韓国語で「お母さん」を意味する“オモニ”として街の人々に愛される延実(のぶみ)さんをクローズアップします。

これまでの「あんな、ひと」はこちら

さらに今回は特別企画として、2026年11月21日(土)に「成田商店」でanna読者限定イベント「本格キムチづくりワークショップ」を開催! 記事の最後で詳しい参加方法をご案内していますので、あわせてお見逃しなく。

まずは、絶品のキムチはもちろん、オモニとの会話もおかわりしたくなる、そんな彼女の温かいお人柄とキムチへの情熱に迫ります。

大阪コリアタウンの東、オモニに会いたくなるお店へ

韓国のグルメやコスメ、エンタメを求めて、多くの人が訪れる大阪・生野区。日本有数のコリアタウンとして知られるこの街は、昔も今も変わらず、にぎわいを見せています。

かつて地元の人々から「朝鮮市場」と呼ばれて親しまれた御幸通商店街は、現在「大阪コリアタウン」として広く人気を集めています。フォトジェニックな韓国スイーツを片手に街歩きを楽しむ観光客と、長年ひいきにしている惣菜店でいつもの味を求める常連客が交差するこの場所は、世代も国籍も異なる人々が行き交い、ここでしか見られない活気あふれる風景をつくりだしているようです。

そんな大阪コリアタウンの東のはずれに足を延ばすと、鮮やかなブルーの看板と、ひときわ目を引く人だかりが見えてくるはず。ここは、手づくりキムチと韓国惣菜の専門店「成田商店」。訪れる人々のお目当ては、自慢のキムチと、店先で明るく迎えてくれるオモニとの会話です。

「もし体が二つあったら、一人はキムチを漬けて、もう一人は山へ行ってキムチの素材になる旬の山菜を採りたいのよ」

そう朗らかに笑うオモニ。その尽きることのないエネルギーの源をたどっていくと、やはり行き着くのは、長年向き合い続けてきたキムチの存在がありました。

海を渡り、受け継いだキムチを届けたい

韓国・済州島で生まれたオモニは、幼いころから必ずキムチが食卓にあり、祖母や母がキムチを仕込む光景を当たり前のように見て育ちました。ひと足早く大阪へと渡っていたお姉さんから届く日本の話に胸を躍らせ、高校では外国語の授業で日本語を選択。自然と「いつか日本へ行ってみたい」という思いを抱くようになったといいます。

来日の夢が叶ったのは、日本がバブル景気に沸く時代のことでした。「済州島からソウルに出て、東京や大阪を訪ねました。感想は『日本ってすごい!』のひとこと(笑)。韓国に戻っても『また日本に行きたい』と何度も考えていました」と振り返ったオモニは、27歳で結婚を機に来日。大阪・生野の地で、念願の日本での生活を始めました。

当時の生野エリアは、まだ「朝鮮市場」と呼ばれていた時代の面影が色濃く残るころ。日本で暮らす韓国の人々に故郷の味を届けるため、さまざまな店先には手づくりのキムチや惣菜が並んでいました。その中の一軒が、今から25年前にお姉さんが創業した「成田商店」です。

一方のオモニは、専業主婦として家庭を守る日々を送っていました。しかし「成田商店」の評判が広まり、店舗を拡大するタイミングで、キムチづくりを手伝うことに。

「家も近かったし、お姉さんの力になれたらと思って」と、気軽な気持ちで厨房(ちゅうぼう)に立ちはじめたことが、すべての始まりでした。「この食材を使ったらさらにおいしくなるかもしれない」「もっと韓国の家庭の味を届けたい」と、みるみるうちに新たなメニュー開発にのめり込んでいったそうです。

祖母から母へ、母から娘へと、家庭の台所で受け継がれてきたキムチづくりの知恵と記憶、そしてお姉さんが積み重ねてきた経験を受け継ぎ、オモニはキムチを漬け続けます。それは単なる仕事ではなく、オモニ自身の楽しみであり、大きな喜びになっていきました。

100年先にも残したい、家族の味

韓国では、野菜だけでなく山菜や魚介といったさまざまな食材をキムチとして味わう文化があり、「成田商店」の店頭にも多彩なキムチが並びます。お店で扱うキムチは、定番の白菜をはじめ、山芋やきゅうり、セロリなどおよそ100種類。旬の時期にしか登場しない顔ぶれもあり、これこそが客足が絶えない理由のひとつになっています。

なかでも一番人気は白菜キムチ。繁忙期には、なんと一日に約1トンもの白菜を漬け込むこともあるというから驚きです。新鮮な白菜を塩漬けにして一晩寝かせ、丁寧に塩を抜いて、販売当日の早朝に自家製ヤンニョムをまとわせて店頭へ。さらにその日の売れ行きを見ながら仕込みを重ね、足りなくなれば営業中にも追加で漬け込んでいきます。

野菜ごとにヤンニョムやニンニク、塩、砂糖などの配合は異なり、一つひとつを手仕事で仕上げていく真摯な姿勢から感じるのは、“もっともおいしい状態”で届けたいという情熱。どんなに手間をかけても、オモニの探求心は尽きません。

「キムチは300種類あるともいわれている(※諸説あり)ので、まだまだつくりたいものがいっぱいあるんですよ!」と話すオモニの表情は、まさに職人そのものです。

忙しい日は深夜3時、普段でも朝6時には厨房に立つオモニ。約15人のスタッフとともに毎日キムチづくりに精を出しますが、その味の核となる「ヤンニョム」のレシピを知る人は、なんとオモニを含めてたった2人だけだそう。

訪れた日も、大鍋ではヤンニョムに欠かせない出汁づくりが進行中。フルーツや野菜、海鮮といったいくつもの素材がぐつぐつと煮込まれている様子に、思わず詳しいレシピを尋ねると、「それは教えない!」とチャーミングな笑顔をのぞかせます。

「ヤンニョムは命。祖母に習い、母に習い、ずっと家の台所で受け継いできた味です。今はちゃんとレシピとして残しているので、100年経っても変わらないと思います。うちのヤンニョムは本当においしいから、絶対に変えたらあかんのよ」

漬けたばかりのみずみずしい味わいも、時間とともに深みを増していく発酵の酸味やコクも、そのまま楽しんでほしいというのがオモニの願い。オモニが毎朝愛情をかけて生み出すキムチは、これからも時代を超えて私たちの食卓を彩ってくれるはずです。

おいしさとともにある、オモニの魅力

長年にわたり、キムチづくりや惣菜の開発を担いながら、「成田商店」を支えてきたオモニ。実は1年ほど前に、創業者であるお姉さんが体調を崩して韓国に戻ることになり、オモニは二代目店長として店頭に立つことになったのです。今では接客も日常となり、「お客さんと話すのが本当に楽しい」と笑います。

「成田商店のキムチを食べたら、ほかのキムチは食べられない」
「大阪に来たからには成田商店に寄らないと!」

地元・生野の常連客はもちろん、関西各地から訪れる人々、そして旅の途中に立ち寄る観光客から届く声のすべてが、オモニの誇りであり、大きなモチベーションになっているそうです。

韓国には“情(ジョン)”という言葉があります。それは日本でいう“情(じょう)”であり、相手を思いやる深い人間愛の象徴ともいえるものなんだそう。

行列に並び、どのキムチにするか迷っている人には「これ、おすすめだから味見してみて」と声をかける。食卓のマンネリに悩む人には「時間が経って少し酸味が出てきたら、お鍋やチャーハンにアレンジしてもおいしいよ」と、とっておきの食べ方を教える。そんな温かいコミュニケーションが、日々の店頭で繰り広げられています。

この一年、オモニの“情”は今まで以上に店づくりにも反映されるようになり、「もっと韓国の家庭の味を楽しんでほしい」との思いから、韓国惣菜の種類もぐっと増えました。

醤油ベースの味付けが人気の豚足やポッサム(ゆで豚)、店先で香ばしい香りを漂わせる焼きたてのチヂミ。どれも、オモニが届けたいと願う“おいしい時間”をもたらしてくれるものばかりです。「成田商店」が人をひきつけるのはキムチの味だけではなく、のれんの向こうに見えるオモニの笑顔と“情”にほかなりません。

目指す夢は、日本一のキムチ店

「大阪コリアタウンも、昔とはずいぶん変わりました。韓国の最新トレンドを発信するお店が増え、古くからあるお店もまた、代替わりをして新しい挑戦を続けています。街の風景が変わっても、この場所が日本のキムチの本場であることは変わらないし、『成田商店』の味も変わりません。ずっとお客さんに『おいしい』と言って、笑顔になってもらえるキムチをつくり続けたいですね」

お姉さんが大切に守ってきた成田家のキムチの味と、店を引き継いだオモニの願い。それは、「成田商店」が日本一のキムチ店になることです。「大阪で一番になれたら、それはもう日本一よ!」そう言って豪快に笑う姿は、どこまでも朗らかで、頼もしさにあふれています。

この店でしか味わえないキムチのやさしい辛さにほれ、野菜本来の魅力を生かした食感の虜(とりこ)になるだけでなく、キムチ愛にあふれたオモニに会うために、今日もまた大阪コリアタウンに足を運びたくなりました。

成田商店(なりたしょうてん)

大阪府大阪市生野区桃谷5-3-19
営業時間:8:00〜18:00
定休日:不定休
https://naritakimuchi.stores.jp/

『あんな、ひと』では、次回も関西で活躍する存在にスポットライトを当ててご紹介します。お楽しみに!

【11月21日(土)開催】コリアタウンのオモニ直伝!絶品キムチづくり体験。~“香ばしい”お土産付き~

大阪コリアタウンで大行列をつくる「成田商店」にて、anna読者限定のワークショップを開催します。唐辛子からヤンニョムを混ぜ合わせてつくる本格的なキムチづくりに挑戦! 自分で漬けたキムチの持ち帰りに加え、大阪コリアタウンの人気店から集めた豪華なお土産セットもついてくるannaオリジナルの特別企画です。名物オモニの笑顔にも会えるかもしれません。楽しくおいしい時間を一緒に過ごしてみませんか?

開催日時:2026年11月21日(土)11:30~13:00(11:15 成田商店に集合)
開催場所:成田商店(大阪府大阪市生野区桃谷5-3-19)
参加費用:3,300円(税込)
定員:10名(先着順、申し込みは1組2名まで)
募集期間:2026年10月30日(金)18:00~11月16日(月)12:00
参加対象:10歳以上※18歳未満の方は保護者の同伴が必要です。見学のみのご参加は不可となります。
持ち物:保冷バッグ、汚れてもいい服装(※使い捨てエプロンの用意あり)

※会場は階段があるため、車椅子でのご参加は不可となります。

詳細はこちら

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