TOP ライフスタイル 【大阪・河内長野】歴史あるお寺に新たな息吹を。盛松寺を支える髙橋美和さんの飾らない素顔

【大阪・河内長野】歴史あるお寺に新たな息吹を。盛松寺を支える髙橋美和さんの飾らない素顔

「あんなぁ」と、明日誰かに伝えたくなる人にスポットライトを当てて紹介する「anna」の連載企画「あんな、ひと」。第13回目は、大阪府河内長野市にある高野山真言宗の寺院「盛松寺(せいしょうじ)」をご住職とともに支える、寺族婦人(※)の髙橋美和さんをご紹介します。

長男が運営する『TERA TOURISM』とタッグを組んで、“集い・学び・体験”をテーマにした「寺子屋」を立ち上げ、こだわりの空間づくりやお香のワークショップに取り組む美和さん。「お寺をご縁をつなぐ場所にしたい」と語る、その明るく自然体な素顔に迫りました。

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※寺族婦人(じぞくふじん)とは:ご住職の奥様など、共にお寺の維持や運営を支えるご家族の呼称

弘法大師ゆかりの「柚子みそ」。歴史あるお寺への嫁入りも「あっけらかんと」

弘法大師が槇尾山へ向かう途中に立ち寄り、疫病に苦しむ村人に「柚子とみそを混ぜて冬至に柚子みそを作れば、1年間元気に過ごせる」と伝えたという逸話から、“柚子みその寺”として親しまれる盛松寺。毎年12月21日には、無病息災を祈願して手づくりの「柚子みそ」を参拝者に振る舞う恒例行事が行われています。

枚方市出身の美和さんは、お母様が京都の東寺とご縁があったことをきっかけに、お見合いを経て現住職と結婚しました。歴史ある寺院へ嫁ぎ、地域の人々の信頼を守りながら住職を支えることに、プレッシャーはなかったのでしょうか。

「特にプレッシャーは感じず、あっけらかんとしていました。両親がよくお寺巡りをしていたこともあり、幼い頃からお寺は『足を運ぶと心が軽くなる場所』として身近な存在でしたから」と美和さんはほほえみます。

冬至の行事を毎年手伝ううちに、「訪れる皆様に幸せを持ち帰っていただける場所にしたい」という思いが強くなっていったのだそう。育児が一段落した2年前からは、お寺の運営に携わるようになり、家族一丸となって盛松寺に新たな風を吹き込み始めました。

台風被害からの再生。「経年美化」をテーマにしたモダンな寺子屋づくり

現在「寺子屋」として活用しているのは、築109年の歴史を刻む「庫裏(くり)」と呼ばれていたお寺の台所。2018年の台風21号で甚大な被害を受けたことを機に、改修を決意したといいます。

「“お寺は人と人とのご縁をつなぐ場所”という原点に立ち返り、伝統あるものを新たな形で輝かせたい」。そんな美和さんの思いから、“集い・学び・体験”をテーマにした「寺子屋」が誕生しました。

空間づくりは、インテリアや建築が好きな美和さんが担当。「“生かせいのち”というお大師様の精神を大切に、今と昔を同時に感じられる空間を目指しました」と語るように、“経年美化”をコンセプトに、大正ガラスを用いた引き戸や欄間(らんま)を生かした什器(じゅうき)、瓦をあしらったエントランスの装飾など、かつての意匠を随所に取り入れています。天井を大胆に取り払ってむき出しの梁(はり)を見せつつ、一般的な古民家リノベーションとは一線を画すグレー基調のシックな内装に。古いガラスのオブジェや器がセンス良く配され、彼女の言葉通り「今と昔を同時に感じられる空間」を見事に体現しています。

中でも目を引くのは、阿弥陀如来が鎮座する仏間です。「夕暮れ時には、金色の光が阿弥陀様を照らし、神々しく輝きます。何か大きなパワーをいただけるような気持ちになりますね」と美和さん。

また、コロナ禍には「沈んだ心が明るくなるような場所にしたい」と、家族4人で境内の整備にも着手。竹を切り、白い石を敷き詰め、住職が丹精込めて育てる約130鉢の蓮(はす)を並べたことで、“蓮のお寺”としても話題を呼ぶようになりました。「より良いお寺にするために意見を出し合い、一つひとつ形にしていく。そんな体験をすることで、家族の絆も深まりました」

「良縁」をつなぐお香づくりと、次世代への新たな挑戦

美和さんの朝は、本堂でご本尊様にお祈りすることからスタートします。ワークショップが開催される日はさらに、境内を掃除し季節の花を生けるなど、お客様を迎える準備へ。「来て良かった」と心から満足してもらえるよう気を配る時間は、美和さん自身の心を整える時間でもあるそうです。

「お寺に足を運ぶ新たなきっかけになれば」とスタートしたお香づくり体験。お香から立ち上る煙は、あの世とこの世を結び、対話するための架け橋ともされ、仏教と深い関わりがあるそう。

体験では、白檀(びゃくだん)や桂皮(けいひ)、丁子(ちょうじ)など9種類の天然香木を使用。ベースの香りに好みの香木を加え、自分だけのオリジナルブレンドに仕上げます(※)。

「その日の体調や気分によっても、選ぶ香りがまったく変わるのがおもしろいところ。オンリーワンの香りに癒やされてくださいね」そう語る美和さんは、祖母の留袖をリメイクした上品な黒いワンピースをまとい、心づくしのおもてなしをしてくれます。

体験後は、オリジナルの和菓子と、自分で点てたお抹茶を味わいながらのティータイム。住職からお寺の歴史や仏教にまつわる話を聞いたり、その日たまたま居合わせた参加者同士で和やかに談笑したりと、一期一会の出会いを体感できる特別な時間です。
※12月限定で、お香づくりに代わり「柚子みそづくり」のワークショップを開催

さらに近年は、長男の英眞さんが立ち上げたお寺の体験プロデュース会社「TERA TOURISM」の活動により、若い世代やインバウンドの参拝者も増加。美和さんもこの取り組みを全力でサポートしています。

「昔は地域の人が集う場所だったお寺も、今では足を運ぶ人がどんどん少なくなっています。そんな現状を変えようと、息子が『体験コンテンツを通じて、全国の人とお寺を輝かせたい』と立ち上げました。まずはここ盛松寺からスタートし、新たなご縁が生まれる温かい場所づくりを全国へ広めていきたいですね」。家族の思いが一つになり、お寺の新たな可能性が着実に切りひらかれています。

お寺を“心が満タンになる場所”へ。美和さんが描く未来

今後の展望を尋ねると、「寺子屋の横に自然を感じれる『宿坊』をつくり、思い出のウェディングや家族との記念撮影など、さらにご縁をつなぎ、たくさんの人を笑顔にできる空間にしていきたい」と語る美和さん。

「すてきな空間やものづくり体験を通して五感を刺激し、日常にワクワクやドキドキを届けたい。『あの時楽しかったね』と思い出に残る、“心が満タンになる場所”にしていきたいんです」

現在は、『TERA TOURISM』とともに、お香を添えた御守り作り体験や老山白檀のお数珠作り体験、本堂での坐禅(ざぜん)など、楽しく過ごせる新たな体験コンテンツを企画中。オリジナルキャラクター「ゆず坊」のフォトスポット設置にも意欲をのぞかせます。

そんな美和さんご自身にとって“心が満タンになる場所”を尋ねると、「ご本尊様がいらっしゃる本堂です」とにっこり。「いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします」と手を合わせることで、人の心に寄り添う“同行二人(どうぎょうににん)”の精神を再確認し、お大師様とともに自分の道を歩んでいく思いを日々胸に刻んでいるそうです。境内のベンチに腰掛け、吹き抜ける風を感じながら金剛山を見渡す時間も、大切なリフレッシュ方法だとか。

終始、気さくなトークで取材班を楽しませてくれた美和さん。いつも晴れやかな笑顔でいるための秘けつは何でしょうか。

「常に楽しんで過ごすことですね。泥の中からでも美しい花を咲かせる蓮のように、どんな状況下でも自分の軸さえ持っていれば、オンリーワンの花を咲かせられる。そんなふうに、自分らしさを忘れずに楽しく過ごすことが私のモットーです」とほほえみます。

日々感謝の気持ちと周囲への気配りを大切にしながら、伝統をしなやかにアレンジし、自分らしく生きる美和さん。今日も家族とともにたくさんの人のご縁をつなぐため、お寺の新たな在り方を紡いでいます。

盛松寺(せいしょうじ)

住所:大阪府河内長野市楠町西1211
南海高野線「千代田駅」から徒歩約12分

『あんな、ひと』では、次回も関西で活躍する女性にスポットライトを当ててご紹介します。お楽しみに!

【11月29日(日)開催】心と身体を解放するお寺リトリート。和のやすらぎに包まれる、お香&キャンドルホルダーづくり

奈良県吉野郡のあかり作家・坂本尚世さんによる「キャンドルホルダーづくり」と、盛松寺での「お香づくり体験」がセットになったannaオリジナルのコラボイベントを開催します。 お寺の心安らぐ空間で、温かいあかりと自分だけの香りに癒やされる一日を過ごしてみませんか?

開催日時:2026年11月29日(日)13:30~15:30(13:20 盛松寺に集合)
開催場所:盛松寺(大阪府河内長野市楠町西1211番地)
参加費用:無料
定員:10名(抽選、申し込みは1組2名まで)
募集期間:2026年10月30日(金)18:00~11月12日(木)12:00
※抽選後、当選された方へのみ11月16日(月)12:00以降にご連絡をいたします。
参加対象:13歳以上※18歳未満の方は保護者の同伴が必要です。見学のみでご参加は不可となります。
持ち物:なし

※会場は階段の昇り降りがあるため、車椅子でのご参加は不可となります。

※本イベントは無料の抽選制のため、一人でも多くの方にご参加いただくため、当選後にご都合が悪くなった場合は、必ず当事務局へ直接キャンセル連絡をいただくことが応募の条件となります。

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