【大阪歴史博物館】今、人気再燃！約150点の「川瀬巴水」作品が集結する特別展へ

“旅情詩人”の生涯を代表作と共にたどる

大正から昭和にかけて活躍した木版画家・川瀬巴水は、新版画の人気の火付け役として、今あらためて注目を集めています。

近代化とともに変貌していく時代、日本の原風景を求めて全国を旅し、庶民の生活が息づく四季折々の風景を描いた巴水。
特別展では、“旅情詩人”とも呼ばれた川瀬巴水の生涯をたどりながら、初期から晩年までの代表的な作品を展示します。鑑賞前に押さえておきたいトピックスをご紹介しましょう。

【第1章】初期の風景シリーズを特集

鏑木清方門下となって美人画を描いていた巴水。やがて風景画にも興味を持ち、新版画を提唱する版元の渡邊庄三郎と出会います。
新版画とは、大正から昭和にかけて興隆した多色摺木版画のこと。浮世絵の伝統技術を継承しつつも新しい表現を取り入れ、絵師、彫師、摺師、版元による協業で制作されました。

第1章「版画家・巴水、ふるさと東京と旅みやげ」では、庄三郎とともに版画家として歩み出した初期から関東大震災発生前までの作品を紹介。
「旅みやげ第一集」「旅みやげ第二集」「東京十二題」「東京十二ヶ月」など、風景画シリーズが登場します。

【第2章】1930年代にかけての代表作をPickup！

1923年の関東大震災によって、巴水は写生帖など画業の成果のすべてを失います。
店の再建に取り掛かった庄三郎は、巴水を生涯最長となる旅に送り出し、新たな創作につなげていきました。

巴水の画風は震災前後で鮮やかで明るい色彩を強調し、より写実的な筆致へと変化。1930年代にかけて、巴水の国内外で評価は高まっていきました。
第2章「旅情詩人巴水、名声の確立とスランプ」では、この時期に描かれた代表作「芝増上寺」や「馬込の月」を含む「東京二十景」を紹介。雪景色や月夜の風景は、きっと観る人の心をぎゅっととらえるでしょう。

大阪ゆかりの風景も作品に

1933年、巴水は伊勢から奈良、紀州、京都、大阪を巡る2週間余りの旅をします。
旅での収穫をまとめた『日本風景集Ⅱ 関西篇』には、大阪の風景も登場！古き大阪に思いを馳せながら鑑賞できそうです。

【第3章】新境地を開拓した円熟期

高い名声を得ながらも作風のマンネリ化を感じ葛藤する巴水は、画家仲間の誘いで朝鮮半島への旅へ。異国の風景・風俗の新鮮さに魅了され生まれた連作で、新境地を開拓していきます。

戦後は、GHQ関係者からの肉筆画制作の依頼や、アメリカの日本版画展への出品など、巴水の作品は海外でも人気を集めることに。
近年では、アップル・コンピュータの共同創業者であるスティーブ・ジョブズ氏が、好んでコレクションしていたことでも知られています。

季節や天候、時の移ろいなどを、細やかなタッチと美しい色合いの作品を鑑賞すれば、たっぷりと心のチャージができそうです。

＼from Writer／
今回の特別展は、約150点もが集結するスケールで観ごたえがありそう！ 作品には私たちがよく知っている地名が多く登場するので、身近に感じることができそうですね。今年の秋は大阪歴史博物館を訪れて、芸術に浸るひとときを過ごしませんか。

特別展『川瀬巴水 旅と郷愁の風景』の公式サイトはこちらから

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