「アカン」「メッチャ」「イタイ」が定着したワケ【とっさの関西弁】
ひとくくりに関西弁といっても地域によって、年代によって微妙に違うのは、関西人なら誰でも感じていること。なかでも、突然の状況や予期しない事態に直面したときに思わず出る「とっさの一言」は、その人の出身やそのときの気持ちによって、ニュアンスがずいぶん違ってきます。放送作家・橋本昌人さんを監修に迎え、普段なにげなく使ったり聞いたりしている関西弁を深掘りします!
<本日のお題>
東京でも日常会話の中に、関西弁の「アカン」「メッチャ」というワードが普通に出てきます。さらに「イタい」「サムい」とか。そもそも、これはどこから来た言葉?
知らずに使っている“芸人言葉”
関西弁を全国区にしたのは明石家さんまさんだと言われています。それまで全国放送では標準語を話すという暗黙のルールがありました。関西の芸人さんが東京で活躍するようになって、関西弁が耳になじんできましたが、実際は全国の人にわかりやすいようにアレンジが入っています。また、内々の会話や楽屋での世間話に使っていた言葉の数々が、人気芸人の露出によるメディアの力で広まり、若い人たちに使われだして定着したものもあります。
「イタい」「サムい」「グダグダ」も今や一般的に
場の空気が読めずに浮いている人や様子を指す「イタい」や、話の内容がウケてない様子、またその内容そのものを指す「サムい(サブい)」や、まとまりがなく面白みもボヤけてしまった状態を指す「グダグダ」も、お笑い芸人発信でしょう。
たとえば「うちの上司、飲み会でサムいダジャレを連発して、序盤からグダグダにしてしまわはった。ちょっとイタい人やねん」。こんなふうに言うと、きつい内容が少しなごみますね。
「引く」「ドン引き」「イケてる」の元は芸人言葉
これらは、いわゆる“芸人言葉”が定着したものでしょう。
あきれるほど受けずに座が凍りつくような状態を昭和では「しらける」と表現しましたが、今では「引く」とか「ドン引きする」と言いますね。これも人気芸人たちが定着させました。
舞台から客席を見ると、ネタが受けたときはお客さんたちが腹を抱えるので前かがみになりますが、受けなかったときは曇った顔を若干、引き気味にして引き潮のようにス~ッと盛り上がりが失われていきます。その様子から生まれた言葉という説もあるようです。
後輩芸人が舞台上のトークでお客さんを引かせたとき、千原兄弟の千原ジュニアさんはすかさず「わろとけ、わろとけ(笑っとけ笑っとけ)」と客席に言い放って空気を戻しますが、これも芸人発信の使える言葉ですね。
ちなみに、センスが良い状態や物に対して今は普通に使う「イケてる」という言葉は、ナインティナインの矢部浩之さんが広めて定着しました。「そのTシャツ、イケてるやん! イケてるがな!」と使えば関西弁ですが、この言葉は番組名にも使用され定着しすぎて、関東の人も「メッチャ」と同じくらい多用しています。(橋本さん)
まとめ
全国を席巻しつつある(?)関西弁には“芸人言葉”が盛り込まれています。でも、そこはしゃべりのプロであり、タフな精神の芸人さんが使ってきた言葉。言いにくいことを角を立てずに伝えたり、言われても笑い飛ばせるような空気があったりするのも事実なのです。この先もいろんな言葉が広まっていきそうですね。
教えてくれた人放送作家・橋本昌人さん
大阪府出身。大阪芸術大学 芸術学部 放送学科卒業。テレビ、ラジオ、CMなどの制作に携わると同時に、企業や学校で人間力とコミュニケーション力を身に付ける「お笑い研修プログラム」を展開。2013年から泣くことで癒やしを得る「涙活(るいかつ)」を提唱、各界から注目されている。著書に『なみだのラブレター』がある。株式会社ブック・ブリッジ代表取締役社長。
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