読売テレビ・中谷しのぶアナに聞く「相手に寄り添う」本当の意味。被災地取材で見つめた言葉の重み
読売テレビ『かんさい情報ネットten.』のメインキャスターを務める中谷しのぶさん。報道の現場に立つ傍ら、後輩の育成にも取り組んでいます 。
2026年3月には3名の後輩アナウンサーとともに、能登半島地震の被災地・輪島へ。ニュースを届けるプロとして、そして先輩として、後輩たちにつなげていきたい、現場で見つめてきた“相手に寄り添い、伝える”仕事の本質に迫ります。
目の前の状況を受け止めるだけで精いっぱいだった新人時代
初めて災害現場を取材されたのは、いつ頃だったのでしょうか? そのとき、現場でどんなことを感じられましたか?
入社1年目(2011年)に、兵庫県で発生した土砂災害の現場から中継したのが、被災地での初めての取材です。崩れた土砂が民家に流入し、倒木が家屋を貫くなど、被害の大きさを目の当たりにしました。それまで、被災地の映像を見聞きしたことはありましたが、いざ現場を目の前にすると、この状況をどう伝えたらいいのか、という戸惑いの方が大きかったのを覚えています。
被害の大きさに衝撃を受けられたんですね。
目の前の状況を受け止めて、言葉にして伝えるだけで精一杯でした。後で振り返ったときに、被災地にはそこに暮らす人たちの生活があって、大切なものがあるというところまで想像が及ばなかったのが、反省として残りました。
その経験が、今の取材姿勢につながっている部分もあるのでしょうか。
私たちアナウンサーは、災害の現場に足を運び、自分の言葉で伝えるのが仕事です。この“伝える”には、被災地の現状を報じるだけでなく、被災者の方が語ってくださった言葉や、その奥にある思いを視聴者に届けることも含まれます。だからこそ、一人ひとりが抱える目に見えない部分を汲み取ることが大切なのだと考える、大きなきっかけになりました。
日頃から災害の映像を目にしてはいても、現場で受ける衝撃は想像を超えるものです。実際に自分の足で現場に立ち、見て、聞いて、感じることで、初めて自分なりの向き合い方が見えてくるのだと思います。
現場で培った経験を次の世代へとつないでいきたい
現場の声を届けられるアナウンサーを育成したいと、佐藤佳奈アナ、藤岡宗我アナ、増田陽名アナの3名の後輩アナウンサーによる被災地取材研修を企画されたそうですね。
災害と向き合うことは報道において欠かせないことですし、いつどこで起こるかわかりません。だからこそ、ふだんから災害現場との向き合い方を自分なりに考えてほしいという思いから企画しました。
お三方は被災地での取材は初めてだったのですか?
はい。今回は、2024年の能登半島地震で被災した石川県輪島市にある幼稚園を訪問し、園長先生に大規模火災があった輪島朝市でお話を伺ったり、同じく地震で被害にあった歴史ある醤油・味噌の醸造所の方々にお話を聞く機会をいただきました。藤岡アナウンサーと増田アナウンサーは入社1年目ということもあり、言葉を探りながら緊張している様子が新人時代の自分と重なるところもありました。
現地までの道中ではどんなお話をされましたか?
被災されて大変な状況のなかでも、取材に応じてくださる方々がいらっしゃいます。その方たちの言葉を丁寧に伝えることが私たちの使命であること。また、取材対象者の心情を決めつけず、まっすぐに向き合う姿勢を大切にしてほしいとも伝えました。
「決めつけない」とは、どういうことでしょうか?
被災直後の取材で、輪島朝市でお店を失った方が、「店が一瞬で焼けてしまって、自分も一緒に燃えてしまったらよかった」と心の内を話してくださったことがありました。
その後、公費解体が進んでいると聞いて「大切なお店が解体されるのもつらいことだろう」と思って現地に行ったのですが、実際にお話を伺ってみると、その方は「悲しかったけれど、前を向く力にもなった」とおっしゃったんです。その言葉を聞いたとき、はっとさせられました。
被災された方がつらい状況にあるだろうことは容易に想像がつきますが、実際はそんな単純なものではありません。それぞれがさまざまな思いを抱えて日々を過ごしておられます。だからこそ、こちらの先入観で捉えず、真摯に向き合うことが大切だと気づかされた瞬間でした。
これまでの経験が、現場の声を大切にする取材につながっているのですね。
今回の研修では、3名それぞれが多くの気づきを得てくれたように感じています。提出してもらったレポートに「自分が聞きたいことを前提に質問を考えていたけれど、相手が何を伝えたいのかを考えることの大切さに気づいた」という言葉があり、こちらの思いが伝わったのだと嬉しくなりましたね。
報道の意義を感じる一方で、マイクを向けることへのためらいも
被災地という過酷な現場に入る準備として、意識されていることはありますか?
「自分のことは自分で完結する」ということです。被災地は本当に大変な状況にあるなか、取材させていただく立場だということを忘れずに、体調管理はもちろんのこと、携帯トイレなどの装備を整えて向かいます。現場への道路状況もわからないですし、水道、電気などのインフラが止まっているので、被災地に迷惑をかけないことを強く意識しています。また、コロナ禍以降は感染対策も徹底して行っています。
取材を行う際に心がけていることはありますか?
相手の立場に立って考えることを心がけています。たとえば、避難所での取材は、被災地で本当に必要とされていることが伝えられるという点では大きな意味があります。ですが、着の身着のまま避難して、そこで何日も何週間も過ごさなければならない。そんななか、メディアが来てマイクを向けられたら「私だったら嫌だろうな」と思うんです。実際に、厳しい言葉をいただくこともありますから。
報道する側の立場として葛藤されることもあるんですね。
それは日々考えています。でも能登のみなさんは本当に優しくて、ご自身が大変ななか、私たちに温かな言葉をかけてくださいました。「伝えてくれてありがとう」という感謝の言葉に、私が支えられたことが何度あったことか。被災者の方にマイクを向けることに心苦しさを感じることもありますが、伝え続けることが私の使命だと思っています。
大好きな祖父母に伝えたいという思いが言葉選びの軸に
現場で取材した状況や被災者の方が伝えたい思いを視聴者へ届けるために、どのような準備をされていますか? 原稿はご自身で書かれるのですか?
中継の原稿は自分で書いています。取材で見たこと、聞いたことを文字に起こして、どういう構成にすれば分かりやすく伝わるか、本社と連絡を取りながら組み立てています。放送までの限られた時間のなかで、本番ギリギリまで推敲して仕上げていきます。
原稿を作るうえで一番重視していることは?
テレビの向こうで情報を待ってくださっている視聴者のみなさんに、正しく伝わる構成にすることですね。そこでいつも意識しているのが、90代の祖父母の存在です。ずっと応援してくれている、私にとってお守りのような存在で、二人が聞いて理解できるかどうかが、ひとつの判断基準になっています。
不特定多数ではなく、身近な人の顔を思い浮かべるんですね。
そうなんです。二人に伝わる言葉を選ぶことで、結果として、カメラの向こうの多くの方にも届くのではないかと考えています。
最後に、身近な人が悲しみのなかにいるとき、どう寄り添えばいいのか。anna読者にメッセージをお願いします。
うーん、難しいですね。私も教えてほしいくらいです(笑)。あえて挙げるなら、やっぱり「聞くこと」でしょうか 。限られた時間のなかで相手の思いをすべて理解するのは難しいですが、聞いて受け止めることはできると思うんです。その積み重ねを大切にしたいと感じています。変にフィルターをかけず、そのまま受け止めること。何かしてあげようと構えるよりも、まずはそこからなのかなと思います。
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「相手の立場に立ちながらも、決めつけない」という言葉が印象的でした。相手の思いを決めつけず、そのままを受け止めるという姿勢は、報道の現場だけでなく、私たちの日常にも通じるものがあるのではないでしょうか。被災者の声に耳を傾け、丁寧に伝え続ける中谷さんの言葉は、これからも多くの人に届いていきそうです。

中谷しのぶ
2011年に読売テレビに入社。2017年より『かんさい情報ネットten.』(月〜金・夕方4時50分〜)のメインキャスターを務める。2024年の能登半島地震では発生直後から現地入りし、被災地の現状を取材。その後も継続的に、現地の声に寄り添いながら報道を続けてきた。現在は報道の第一線で活躍する傍ら、後輩アナウンサーの育成にも力を注いでいる。
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