但馬近代化遺産探検・オーベルジュ豊岡1925
明治から昭和にかけて形成された歴史文化資源・近代化遺産が兵庫県北部の但馬地域にも残っており活用されています。
豊岡市の中心部、豊岡市役所のすぐそばに位置する「オーベルジュ豊岡1925」も近代化遺産の建物のひとつです。
この建物は、1934年(昭和9)に「兵庫縣農工銀行豊岡支店」として建てられ、その後山陰合同銀行や豊岡市役所の庁舎としても利用されていました。
2014年(平成26)にオーベルジュとして改装され、近代化遺産の趣を保ったまま新たな活用が行われています。
今回は、この近代化遺産を探検していきたいと思います。
オーベルジュ豊岡1925のホームページに掲載されている建設当時の写真です。
現在の写真と比べてみると、商店街のアーケードが建物の前に建築されているものの、ほとんどそのままの形で残されていることが分かります。
近代日本に関西を拠点として活躍した建築家・渡辺節氏によって設計されたもので、ルネッサンスの様式を取り入れた銀行建築なんだそうです。
一見すると、純洋風な建物に思われますが屋根は瓦葺きとなっており和洋折衷の佇まいとなっています。
外観の壁には、このような模様がほどこされています。
これらはアールデコとよばれる1925年に行われたパリの万国博覧会を機に広まったデザインで、豊岡市街地に数多く建ち並ぶ昭和初期の建物にもこのような洋風のデザインが多くほどこされています。
現代の私たちが見ても、味わい深いデザインですね。
アーチ状のおしゃれなデザインが施された窓には、当時の銀行建築によく見られる格子がはめられており面影を今に伝えています。
正面玄関の「1925」という看板の下には、2006年(平成14)に国の有形文化財に登録されたときのレリーフが掲げられています。
正面玄関から入った建物の内部は、レストランとしてリノベーションされていますが、壁面にはアーチ状の壁の造形などから当時の雰囲気が感じられます。。
この場所では、本格的なフレンチが堪能できるほか、コンサートも開かれるなど多様な活用が行われています。
かつて銀行であったときの1階フロアの写真と現在のものを同じ方向から見てみると比べてみると
フロアに設置してあるものこそ違うものの壁や窓などの作りは、当時のままであることが分かります。
1階レストランフロアを囲むように置かれているのは、レトロなオイルヒーターです。
これは、建設当時から置かれているもので、現在は使えないそうですがインテリアとして残されています。
当時の様子を写した写真にもしっかりとこのオイルヒータが写っていました。
レストランカウンターの後ろにある電話室の扉も当時のそのままだそうです。
漢字のフォントからレトロな雰囲気が出ていますね。
何気ない壁面の模様もおしゃれです。
1階フロアのショーケースを吹き抜けの2階部分から見てみました。
2014年(平成26)にオーベルジュにリノベーションされたときに、豊岡市街地にある寿ロータリーをもとにデザインされたのだそうです。
実際にロータリーにある六叉路も再現されていますね
そのショーケースの中央に置かれているのが11時過ぎで止まった時計のオブジェです。
その時間は、1925年(大正14年)に豊岡市街地に甚大な被害をもたらした北但大震災が起こった時間です。
豊岡の産業を象徴する鞄の上にあることで、震災から復興したまちを印象づけているのだそうです。
また、震災が起きた年号がオーベルジュ豊岡1925の名前の由来であり、この建物も震災からの復興建築の一つでもあります。
「1925」が、豊岡のまちが近代化するスタートとなった年であったのです。
オーベルジュとは、宿泊設備を備えたレストランのことです。
オーベルジュ豊岡1925にも、レストランのほか宿泊できるホテルの施設も備わっています。
銀行当時の執務室を客室として使用しているため、部屋の大きさはさまざまなのだそうです。
部屋数は、全6室と少ないですが、近代化遺産の雰囲気を満喫することができます。
客室内はシンプルで、雰囲気を壊さないためテレビも設置されておらず、読書などでゆっくりと過ごすことができます。
窓から眺める豊岡の町並みも、この部屋から見ると心なしかレトロな雰囲気につつまれています。
客室や、ホテルの廊下に置かれた調度品は、当時の雰囲気を彷彿とさせるようなものばかり…
館内を少し歩くだけでタイムスリップしたような気分になりますね。
階段の踊り場からの1枚です。
面白い形の窓と真ん中につるされた丸ライトが左右対称にデザインされて、いい雰囲気となっています。
建設当時から細部まで考えられて設計されていることが伝わります。
建物の中を探検していると、レストランフロアから2階に上がる階段の途中に怪しげな鉄格子の扉がありました。
この中に入ってみると…(見学自由だそうです。)
鉄格子の扉をあけて、細い廊下を進んでいくと、とても重厚な鉄の扉が現れます。
これは、かつて銀行であったときに使われていた古い金庫とのこと。
扉が重そうですね…90年近く前に銀行として使用されていた歴史を実感することができます。
オーベルジュ豊岡1925では、結婚式や披露宴も行うことができます。
一室をチャペルのように使うこともできるほか、晴れている日などは、建物の道を挟んで向かい側にある同じ近代化遺産の「豊岡稽古堂」前の芝生広場で挙式することもできるのだそうです。
近代化遺産の文化財で結婚式を挙げることができるとは貴重ですね。一生の思い出になること間違いなしです。
なかなかじっくりと拝見することのできないオーベルジュ豊岡1925の建物内ですが、近代化遺産の文化財を活用して、素敵な空間が作り上げられていました。
この場所では、宿泊したり、食事を楽しめるということに加えて、豊岡が北但大震災からの復興を成し遂げてきた歴史の一端に触れることができます。
豊岡に訪れた際には、立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
周辺には、1925以外にも豊岡復興建築群と呼ばれる北但大震災から復興する過程で建設された近代化遺産も多数残されています。
それらもあわせて巡るのがおすすめです。
オーベルジュ豊岡1925
住所:兵庫県豊岡市中央町11−22
電話:0120-210-289(VMG総合窓口 11:00~20:00)
https://www.1925.jp/
オーベルジュ豊岡1925 instagramページ
ホテル・レストラン
https://instagram.com/toyooka1925?igshid=p8r24ku0hrws
ウェディング
https://instagram.com/1925_wedding?igshid=1ljxvip4rftzy