TOP おでかけ 【奈良】予約が取れない宿&サウナ「ume,yamazoe」誕生は偶然!?オーナーの飾らない素顔に迫る

【奈良】予約が取れない宿&サウナ「ume,yamazoe」誕生は偶然!?オーナーの飾らない素顔に迫る

2022.08.15

「あんなぁ」と明日誰かに伝えたくなる人にスポットを当てて紹介する『anna』の連載企画『あんな、ひと』。

第7回目は、奈良県東部の山添村にある、古民家をリノベーションした1日3組限定の宿『ume,yamazoe』オーナーの梅守 志歩(うめもり しほ)さんに迫ります。

■自然の中で生活をはじめて

画像:anna

奈良市内で寿司事業を営む『株式会社梅守本店』の三女として、生まれ育った志歩さん。現在は『株式会社梅守本店』の取締役と、同社が運営する宿『ume,yamazoe』にてオーナー業を兼任しています。

志歩さんが家業を手伝い始めたのは9年前。大学卒業後は不動産情報サービス企業で営業職として働いていましたが、病気がちの姉妹がいたことが心の奥にあり、自身の自由よりも家族のことを想い、たくさんの葛藤を抱えながらも家業への転身を決意します。

それから、営業や事務、経理作業など幅広い業務に携わる忙しい日々の中で、さまざまな出会いから自然に近い場所で暮らしたいと感じるようになったそうです。

画像:anna

そこで選んだのは『梅守本店』が手掛ける『手鞠わさび葉寿し』に使用するワサビの葉の産地として繋がりがあった奈良県の山添村。さっそく家を借り、奈良市内と山添村を行き来する二拠点生活をはじめます。

次第に山添村で過ごす時間が増えてきたころ、観光資源の乏しい中山間地域が抱える厳しい状況を知った志歩さんは、自分にできることはないかと考えるようになっていったそうです。

当時『梅守本店』では寿司職人体験ができる『うめもり寿司学校』が外国人観光客から人気を集めていました。海外営業で世界を飛び回っていた志歩さんは、山添村の魅力も知ってもらおうと営業先でひそかにPR活動を始めたといいます。

画像:anna

「村で野菜を収穫して、地元の人たちと一緒に料理ができる体験などを提案していましたね。村の様子を紹介しただけの、値段も記載していない資料です(笑)。なにもないところに面白いコンテンツをつくることは得意なんです」と笑います。

画像:梅守志歩

その努力は身を結び、イギリスからの観光客向けにお茶摘み体験や料理教室などのワークショップを開催。参加者からの反応も良く、個人・団体問わず参加依頼が増えていきます。そのため、これまで会場としていた村民の方のおうちの離れなどでは手狭になっていました。

そこで志歩さんは、スペースの確保に奔走します。「運よく山添村で物件を購入できたんですが、古民家って修繕費がめちゃくちゃ高いんですよね。悩んでいたときに、宿泊施設の開業を助ける国の補助金制度があると知ったんです」と、偶然の発見から一気に『ume,yamazoe』誕生へとかじを切ることに……。

画像:anna

しかし、志歩さんは『株式会社梅守本店』の跡継ぎ。本業とまったく異なる新たな取り組みに挑戦する娘に対し、ご両親からの反対はなかったのでしょうか。

「何度も家族会議ですよ(笑)。でも、その中で“障がいや病気、性別、人種などを超えて、人が人を大切にする社会、みんなが幸せになる社会をつくっていきたい”という『株式会社梅守本店』が大切にしてきたミッションを家族みんなで再確認できたんです。その軸に沿っていれば、事業形態はなんでもいいよねって」。そう思えたのは、実際に障がいや病気を抱える家族がいるからこそ。

「原体験がもとになっていると、信じられないほどエネルギーが出ます。私は全部ポジティブに変えていけるんです」と、驚くほどまっすぐな言葉で伝えてくれました。

■私が本当にやりたい軸を大切に突き進む

緑の豊かさや静かさが魅力の山添村ですが、長年、この土地で暮らしてきた方々の中に溶け込み、新しい事業を始めるには苦労も多かったとのこと。

画像:anna

「近隣の方へ何度もお手紙を書いたり、用事もないのに話しに行ったりして。その時期に、いまでも大切にしている“こちらからコミュニケーションを諦めないこと”を学びました」と明るく当時を振り返ってくれましたが、壁にぶつかって工事を半年近く止めたこともあったとか。

そんな時は、改めて本当にやりたかったことを振り返り、自分の軸を再確認するそうです。「私の原点は、人が人を大切にする社会をつくりたいってことなんです。“自然の中に人の感覚が穏やかになる場所をつくりたい”という軸はブレないし、迷うこともないです!」と断言。信念を持った猪突猛進の潔さ、かっこよさを感じます。

画像:anna

そして、ついに2020年3月『ume,yamazoe』は開業を迎えます。

車でしかたどり着けない立地。近くにはコンビニやスーパーもなく、客室にはテレビもない。築100年を超える大きな古民家をリノベーションし、3つの客室と屋外サウナを備えた宿のコンセプトは“ちょっと不自由なホテル”です。

画像:anna

宿の名前である『ume,yamazoe』の由来は、庭に植えられていた古い梅の木を見た庭師さんから「この家は梅の木を代々大事にしてきた」と教わったことです。

また、日本特有の大和言葉には音の一つひとつに意味を持ち、「う」は“生まれる”や“生み出す”、「め」は“芽吹き”や“恵み”を表しているという教えにあります。「自然によって人の感覚がもう一度生まれ目覚めるような場所になっていったらいいな」という志歩さんの想いと重なったことが『ume,yamazoe』につながっています。

画像:anna

■訪れるたびにとりこになる「ume,yamazoe」の魅力

画像:anna

現在、志歩さんは『ume,yamazoe』に拠点を置き、一番にお客さんの姿が見えるカウンター席を定位置にしています。

宿を訪れた方と会話をすることも多く、「ホテルのコンシェルジュと宿のおかみさんの間のような、ちょうど良い距離感が最高!」と評判なんだそう。

画像:anna

「距離感を意識しているわけではないんですけど……」と志歩さんは言いますが、実際に宿を訪れてみるとその魅力は人に、客室に、風景にあふれています。

画像:anna

客室には志歩さんが自然に囲まれて暮らすきっかけになったという星野道夫さんの書籍『旅をする木』や、バードウォッチングができるセットがさりげなく置かれており「ゆったりとした時間の流れを楽しんでほしい」という志歩さんの想いが込められています。

画像:anna

ほかにも、床の間の小物やお花をはじめ、宿内のあちこちに飾られたインテリアや雑貨は定期的に入れ替えられています。

訪れるたびに新たな発見が生まれることも、リピーターが多い理由なのだと実感しました。

画像:anna

正面玄関をくぐってすぐに広がる畳のフロアが、この宿のロビーです。縁側からの風が気持ち良く、山々を一望できる居心地の良さからつい寝転んでしまうお客さんも多いのだとか。

何もない豊かさが田舎の祖父母の家を訪れたときのような気持ちにしてくれます。

画像:anna

地域の方々も自分たちが育てた野菜を分けてくれるなど協力的です。

新型コロナウイルスの影響でまだワークショップは開催できていませんが、ご近所さんが帰宅するお客さんを見送る姿が見られることも。実は、取材陣が宿を訪れた際にも、道に迷っているのかと心配してくださり、やさしく声をかけてくれました。

画像:anna

こちらが『ume,yamazoe』の自慢のサウナです。自然に還れる場所を作りたいと屋外に造られたフィンランド式のサウナは、全国の優れたサウナを表彰する『SAUNACHELIN(サウナシュラン)2020』TOP10にも選ばれています。

画像:anna

入り口の扉を閉めると、真っ暗で温度計や時計がない空間。草木の揺れる音や生き物の声に耳を傾け、隙間から差し込む光を眺めるひと時は、自分自身に向き合うための贅沢な時間です。

■山添村から多くの人を幸せに

画像:anna

改築に2年を要し、開業して3年目。予約のとりづらい宿となった現在でも「宿はまだ完成していないですね。まだまだ進化できるし、自分にできることならば100%の力でやります」と語るように、ここがどんな場所になるのか、それはまだ未知数。

画像:anna

2022年、志歩さんは目標の一つを実現しました。

障がいや病気があってなかなか旅に行く機会のない方や、その家族が一緒に楽しめるようにと、月に1度無料で『ume,yamazoe』にご招待しています。そこでの新たな交流から、志歩さんにとっても新たな発見や心の変化が生まれることが多いそうです。

画像:anna

「ここで、たくさんのお客さんとお話しさせていただいて、その人の価値観が少しでも“人に優しい”方へ変化すれば、もしかするとさらにその周りにいる方も、少し、人に優しくなるんじゃないかなって。私は山添村にいても、多くの人の感覚を穏やかに、優しく変わっていく原点につながれていると思うんです」と話す志歩さん。

取材の終盤、静かにゆったりとした時間が流れる『ume,yamazoe』と志歩さんの柔らかな笑顔と強い芯を持つ心に包まれた取材班は、思わず人生相談をしてしまうほど。

会って間もない筆者からの相談にも、一緒に悩み、建前のない答えをくれる気概に触れると、もうその人柄のとりこです。そうか、これが“志歩マジック”なのか!

画像:anna

これからも志歩さんは、山添村にある『ume,yamazoe』から、人と人をつなぎ、幸せにしてくれるはず。取材後には「帰りたくないなぁ」と心の底から感じた、筆者が断言します。

<スポット詳細>
ume,yamazoe
住所:奈良県山辺郡山添村片平452
電話番号:0743-89-1875
営業時間:チェックイン15:00/チェックアウト11:00

【関連記事】<和歌山>新たな可能性にもチャレンジ!“女性初”の伝統工芸士を目指す職人

『あんな、ひと』では、次回も関西で活躍する女性にスポットライトを当て紹介します。お楽しみに!(取材・文/筒井麻由・撮影/ふかみちえ)

【画像・参考】
※ anna/梅守志歩





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