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穏やかな入り江に寄せ合うように家が立ち並ぶ箱庭の漁村・居組を歩く

「たじま途中下車の旅」~居組駅編~

兵庫県美方郡新温泉町にある居組地域。
兵庫県の最北西端に位置し、七坂八峠と呼ばれる険しい峠道を越えると鳥取県へ通じています。
古くから天然の良港として栄えた漁業の町で、鎌倉時代の土地台帳である「但馬国太田文」には、「伊含浦(いぐみうら)」という呼称が記されています。
また、江戸時代には北前船の風待ち港として重用されました。
それでは、穏やかな入り江に寄せ合うように家が立ち並ぶ箱庭のような漁村・居組を散策してみましょう。

 

①居組駅駅舎

スタート地点であるJR山陰本線居組駅の駅舎です。
山陰本線の兵庫県最西端の駅で、人里離れた山間にひっそりとあることから「秘境の駅」と呼ばれ、鉄道ファンに親しまれています。
居組駅が開業したのは、1811年(明治44)です。
当時駅舎は木造・瓦葺の屋根でしたが、2019年に現在の駅舎になりました。

 

当時のにぎわいがしのばれる風景

かつてはホーム2面に3番線まであり、跨線橋もある比較的大きな駅でした。
今では跨線橋が撤去され、ホーム1面に1番線だけの駅になっています。
雑草に囲まれたホーム跡や線路跡、駅舎横に貨物線のレールが残り、当時のにぎわいがしのばれます。

 

駅の玄関口には、日本庭園があったのでしょうか。
今も手入れがされているようです。

 

駅から集落への道

駅を出発すると、400mくらいは写真のような林の中の道が続いています。
居組駅が秘境の駅と呼ばれる所以ですね。

 

山陰近畿自動車道(東浜居組道路)

林を抜けると、次は山陰近畿自動車道(東浜居組道路)の下を通ります。

 

②龍雲寺

居組駅を出発し、10分ほど歩くと、龍雲寺に到着します。

 

鉄道工事遭難病没追悼碑

龍雲寺は、1596年に開山したと伝わる曹洞宗のお寺です。
境内には、鉄道工事遭難病没追悼碑があり、居組駅の西側にある陸上トンネルが難工事であったことがうかがえます。

 

但馬と因幡との文化交流

また、本堂の屋根に取り付けられた懸魚に徳川家の「三つ葉葵」、蟇股(かえるまた)に鳥取池田家の家紋「揚羽蝶」が彫られています。
これは、龍雲寺が1888年(明治21)の大火で本堂などが焼失し、鳥取藩主池田家の菩提寺であった龍峰寺を移築して再建されたもので、但馬と因幡との文化交流を知ることのできる建築物です。

 

異彩を放つ赤レンガ塀

魚見台公園に向かう途中、異彩を放つ赤レンガ塀を見かけました。
明治末期、山陰本線のトンネル工事に従事していた人々が地域の方にお世話になったお礼として建てたそうです。

 

七坂八峠の登り道

龍雲寺から10分ほど歩く(登る?)と、七坂八峠の登り口にある魚見台公園に到着します。
七坂八峠は、兵庫県美方郡新温泉町居組から鳥取県岩美郡岩美町陸上に続く峠で、急カーブや急勾配が続くことから、昔から交通の難所と言われています。

 

③魚見台公園・龍神堂

魚見台公園は、1993年(平成5)に国道178号線(現在は町道七坂八峠線)の緑化事業の一環として整備されました。
魚見台公園の先端には龍神堂があり、龍神(八大龍王)がまつられています。
この龍神は居組の漁師から守護神として信仰され、毎年11月10日に例祭が行われています。
また、公園入口には、居組出身の俳人西村蓼花の句碑があります。

 

オススメの撮影スポット

時間と体力に余裕のある方は、七坂八峠をさらに10分ほど登っていくと展望台があります。
ここからは美しい日本海と居組の町並みを眺望することができ、絶好の撮影スポットです。
日本海に浮かぶ2つの小島、不動山(左)と亀山は居組のシンボルで、不動山周辺には「綱掛」という地名があり、船が係留するために使用した石杭が残っています。

 

④居組漁港

魚見台公園・龍神堂から元来た道を下り、10分ほど歩くと、居組漁港に到着します。
天然の良港である居組漁港も、時代が進むにつれて改良が加えられてきました。
現在の居組漁港は、1970年(昭和45)に大型漁船に対応するため整備されたものです。
ちなみに、かつてこの辺り一帯は、遠浅の砂浜が広がる海水浴場だったそうです。

 

入り組んだ路地の集落

集落の中に入ると、民家が所狭しと軒を並べ、家の間を縫うように細い路地が何本も走っており、まるで迷路のようです。
一説には「入り組んだ土地」が地名の由来といわれているのも思わず納得です。
迷路のような路地にアップダウンが加わり、裏路地探検の醍醐味が味わえます。

 

⑤大歳神社

迷路のような集落を抜けると、前方にグラウンドがあり、グラウンドを横切ると今回のゴール地点である大歳神社に到着します。

 

大歳神社は、861年の創建と伝えられる古い神社です。
境内には、シイやタブノキなどの貴重な古木が生い茂っています。
また、毎年10月9日には、家内安全・無病息災を願って居組麒麟獅子舞が奉納されます。
麒麟獅子舞は鳥取県東部から伝わったとされ、ここでも鳥取との交流が盛んだったことがわかりますね。

 

古くから天然の良港として栄えた漁業の町・居組。
昔から変わることのない、穏やかな入り江、細く入り組んだ路地、寄せ合うように家が立ち並ぶ箱庭のような町並み。
さらには、人と人との交流が盛んであったことがうかがえる赤レンガ塀や船の係留杭など。
裏路地探検の醍醐味が凝縮されたまちです。

 

散策マップ~居組駅編~

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