“崇神天皇9年、天皇の夢枕に神人が現れ、「赤盾8枚・赤矛8竿をもって墨坂神を祀り、黒盾8枚・黒矛8竿をもって大坂神を祀れ」とお告げを残した。天皇がその通りに祀ったところ、当時流行していた疫病は平癒し天下泰平となった”
と『日本書紀』に残る逸話のうち、大坂神が祀られたと伝わるのが大坂山口神社です。同社は奈良県と大阪府の境界で古代から交通の要衝であった「穴虫峠」近くに鎮座します。
実は大坂山口神社は香芝市穴虫と同市逢坂の2か所に存在し、『日本書紀』が指す大坂神を祀った場所がどちらなのかは不明。ゆえに両社とも式内社を称しています。
現在は大坂神と呼ばれる神は祀っておらず、大山祇命・須佐之男命・天児屋根命の3柱がご祭神となっています。近世には牛頭天王が祀られ「牛頭天王社(祇園宮)」と称されていたようです。名は変われど、いつの時代も疫病封じの神を祀っているんですね!
本殿は三間社流造で1816年の再建とされていますが、1625年以来の棟札も残されています。銅板葺きの屋根は1989年に葺き替えたものです。本殿の両脇には琴平神社と市杵嶋神社の摂社2社が鎮座します。
かつては秋の大祭で牛頭天王に奉納する「宮相撲」が行われ、“馬場のお宮さんの相撲”といって、相当賑わったそう。境内に組まれた石垣は相撲を観覧するための桟敷席で、近年までは土俵も残さていました。
近世以降は二上山麓の村ごとに「相撲組」が組織され、境内にも地元の相撲組「馬場組」の記念碑が建ちます。
馬場組からは大阪相撲で活躍した大の松為次郎(1859~1921)も輩出しており、大の松は1915年に大坂山口神社で引退相撲を行ったあと、素人相撲の世話役としても活躍しました。
相撲発祥の地の言われる香芝・葛城地域に根付いてきた相撲文化を体感できる貴重な場所。周辺には大の松の墓地をはじめ古い力士墓も点在しているので合わせて巡ってみて。
名称:大坂山口神社(穴虫)
ふりがな:おおさかやまぐちじんじゃ
住所:奈良県香芝市1499-1
駐車場:あり(出入口は境内北側)
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