置恩寺(ちおんじ/きおんじ)は葛城山麓にある小寺院。寺伝では奈良時代の神亀年間(724~729)に行基が開基したとありますが、実際が葛城を拠点とした古代豪族・置始氏(おきぞめし)の氏寺として、奈良時代末期~平安時代初期に建立されたと考えられています。中世には置始氏の流れをくむという布施氏の氏寺となり「布施寺」とも称されました。
第55代文徳天皇の勅願所としても栄え、一時は大伽藍が形成されたようです。もとは現在よりも山側の中腹に寺があったといい、現在地の集落は寺の入り口にあたることから「寺口」の地名が残ります。
しかし元亀年間(1570~73)に越智氏との戦闘で寺の北方にあった二塚城とともに焼失。布施氏の衰退とともに寺勢も弱まり現在に至ります。ちなみにこの戦闘で焼け残ったとされる仏頭が葛城市歴史博物館に展示されているのでそちらにもぜひ足を運んでみてください。
現在境内には本堂と庫裏、仏像などを安置する収蔵庫が並び立ちます。本堂向かって左手には数年前まで観音堂がありましたが、老朽化のため解体。本堂も壁が崩れかかっているので少し心配です。
収蔵庫の裏手に回ると寺口集落と奈良盆地の絶景。目の前を遮るものがないので遠く京都方面から吉野・大峰の山々を望むことができます。
収蔵庫には十一面観音立像(重文)をはじめ数体の仏像が安置されています。普段は閉鎖しており、毎年4月23日に行われる「薬師お会式」の折に開扉されます。それ以外の日も葛城市役所商工観光プロモーション課を通じて区長さんに事前に連絡しておけば拝観可能です。
十一面観音像は桧(もしくはカヤ)の一木造で、平安時代初期~中頃の造像と考えられています。鼻筋が細く、微笑をたたえる唇の優しく上品な顔立ちに、重心をわずかに左足にのせ右足の力を抜いて立つプロポーション。まさに美仏です。
また庫裏の南側に建つ石燈籠は1502年に置始氏の流れを汲む布施(置始)行国という大和武士が寄進したもの。竿の部分に「文亀二年壬戌 仲夏天 願主 置始行国」と刻まれます。戦乱によって焼失した寺の再建時に寄進されたものと考えられています。
名称:医王山 安養院 置恩寺
ふりがな:いおうさん あんよういん ちおんじ
住所:葛城市寺口706
営業時間:境内自由(収蔵庫拝観は要予約)
駐車場:近隣に無料Pあり(近畿自然歩道寺口駐車場)
TEL:0745-44-5111(葛城市役所商工観光プロモーション課)
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