
〈広陵町〉創業96年の老舗メーカーが目指す“靴下のテーマパーク”/『株式会社 創喜』出張 耕平さん
“靴下のまち” 奈良県広陵町
町を歩けば至るところに“靴下のまち”と書かれた看板。北葛城郡広陵町は靴下の生産量日本一を誇る町です。
明治末期に馬見村(現広陵町)の吉井泰治郎が編み立て機を購入し、靴下作りを始めたことをきっかけに、当時衰退していた木綿織りに代わる農家の副業として広陵町全体に靴下産業が根付いたといわれます。

戦後は高度経済成長とともに発展。最盛期には200軒の工場が軒を連ね、「ソックス」という名のスナックもあったそう。しかし海外生産の安価な靴下が増えると、価格競争が激化。年々工場は閉鎖され、現在町に残る工場は40軒ほどに減りました。

その中で、近年は伝統の技術を受け継ぎながら靴下製造と新たな挑戦に取り組む工場もあります。株式会社 創喜もその一社。
創喜は昭和2年(1927)に創業した「出張靴下工場」に始まる老舗メーカー。現在は出張耕平さんが5代目を継ぎ、社長を務めます。
「広陵町の靴下工場はメーカーからの注文を受けて大量生産するOEMが主流です。しかし決められた価格の枠組みに合わせてなるべく安く作ることを続けていても生き残れない。また下請けで作る靴下は自社の名で売ることもできません。そこで作り手が“創る喜び”を感じて、使い手にも喜んでもらえるものを作ろうと、15年ほど前に『創喜』と屋号を変え、また自分たちで発信できる自社ブランドの企画生産を始めました」

同社の靴下は昔ながらのローゲージソックス。多くのメーカーがデジタル化された機械を導入する中で、職人たちが一つひとつプログラミングし、部品を組み替える30~40年前の機械を丁寧にメンテナンスしながら使い続けています。


糸も天然繊維や再生素材を使用。大量生産・コストダウンが重視される現代に、上質な糸を希少なヴィンテージマシンで時間をかけて編み上げることで、ふかふかとした肌触りと、夏は蒸れにくく、冬は暖かいはき心地の良さを生んでいます。


一方、自社ブランドを立ち上げメーカーと同じ土俵に立ったとはいえ知名度はまだまだ。
「広陵町は長年“靴下の生産量日本一”をアピールしていましたが、その靴下に出合う場所がありませんでした。奈良には多くの人が訪れているのに、広陵町に足を運ぶ人が少ないことに課題を感じていました」
創喜の靴下、広陵町の靴下を知ってもらいたい。そうした思いから誕生したのが「チャリックス」と「S.Labo」です。

チャリックスはルーズソックスを編んでいた80~90年代製の編み機に自転車を取り付けた装置。ペダルを約10分間漕ぐだけでオリジナルの靴下が編み上がるというユニークさから人気を呼んでいます。
S.Laboは工場内のガレージの一部を改装して2022年に誕生した体験施設。自社ブランドが買えるショップに加えてチャリックス、端材を使ったぬいぐるみ作り体験などのワークショップを行う。

アイデアは職人が目の前で蕎麦を打つ蕎麦屋から。「工場見学や靴下を作る体験を通して製品になるまでの背景・過程を見せることで付加価値を見いだしてもらおうと考えました。ファクトリーブランドだからこそできる強みですね」

「私には広陵町に靴下のテーマパークを作りたいという思いがあります。靴下工場を中心に衣・食・遊、泊まで揃えられたら。広陵町に滞在する時間、人が増えていけばうれしいです」。靴下を創る喜びが町に喜びを創り出す。
Profile
出張 耕平
DEBARI KOHEI
施設情報
名称:S.Labo
ふりがな:エス.ラボ
住所:北葛城郡広陵町疋相6-5
営業時間:ショップ10:00〜17:00
※体験は事前予約優先/WEB受付
駐車場:あり
TEL:0745-51-0366
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