お正月にいただく京都の伝統料理〜次世代に伝えたい食文化〜
ついに2024年の到来です。おせち料理はもう食べましたか?
京都府内には、豊かな自然や多様な風土、独自の歴史文化を生かしたお正月料理が伝わっています。そこで新年1回目は、京都府各地で食べられているお正月の伝統食をご紹介。次世代に伝えたい、京都ならではのお正月料理をぜひご覧あれ!
新年の食卓を華やかに彩る京都らしい食材
【京都市ほか】おせち料理の京野菜
まずは、お正月料理定番のおせち料理。京都のおせち料理には、個性あふれる京野菜がふんだんに使われています。
たとえば、こちらの堀川ごぼうも、おせち料理に欠かせない食材。こんなに太いのに繊維も柔らかく、味が芯まで染み渡るから驚きです。さらにビタミンCやミネラルも豊富で、寒い冬にこそぜひいただきたい食材ですね。
以前ご紹介した記事では、金時にんじんやくわい、おせち料理のレシピについても触れているので、ぜひチェックしてくださいね。
食材が集まる京都が生んだ「であいもん」
【京都市ほか】えびいもと棒だらの炊いたん
かつて朝廷があった京都には日本全国からさまざまな食材が集まり、それらを工夫して美味しく食べる文化が育ちました。旬の食材を組み合わせ、双方の魅力を引き立たせた料理をであいもんと呼んでいます。お正月にいただく「であいもん」で有名な料理といえば、えびいもと棒だらの炊いたん。京都市内をはじめ、府内各地で食べられています。
えびいも(京芋)とはその名の通り、海老のような縞々の模様が特徴的な京野菜。肉質が緻密で煮崩れしにくいことから、煮物料理でよく使われています。ねっとりとした食感と独特の旨みが魅力で、11月~1月に旬を迎えることからおせち料理にも使われています。
このえびいもに、北海道から運ばれてきた棒だらを合わせて煮込み、えびいもが柔らかくなったら具材を取り出し、残った汁を煮詰めてからえびいもと棒だらにかけます。最後に千切りにした柚子を散らせばできあがり。棒だらから出るゼラチン質がえびいもの煮崩れを防ぎ、えびいもから出るアクが棒だらを柔らかくするといわれており、食感の相乗効果も◎。京都人の工夫が生んだ傑作ともいえる郷土料理です。
「観音の化身」伝説も残る干し柿を使った伝統食
【山城地域】古老柿なます
「お茶の京都」山城地域では、宇治田原町特産の古老柿(ころがき)を使ったなますを、おせち料理のお重に入れる家庭が多くあります。まだ干し柿が知られていなかった昔々の話、とある娘が甘い干し柿を売り歩いていました。その甘さに感動した村人が娘から干し柿の作り方を教えてもらいます。立ち去った娘の後を追いかけると、娘は禅定寺(宇治田原町)で姿を消し、観音になって再び現れたという伝説が残っています。それから、この干し柿を「孤娘柿」(ひとりの娘が伝えた柿)と呼んだという言い伝えがあります。(他にも諸説あり)
古老柿は、「鶴の子」という渋柿を干して作ります。宇治田原町内では、11月中旬ころから柿を棚に干す「柿屋(かきや)」の光景が晩秋から初冬にかけての風物詩として有名。観音の化身の娘から伝わったという伝承から縁起物として古老柿をお供えする風習もあり、おせち料理の定番として古老柿なますを食べる家庭も多いそうです。他にも、古老柿の種を取り除いてバターを挟む食べ方もおすすめなのだそう。温かい宇治茶と一緒にいただくと、バターが溶け出していっそう美味だとか。一度試してみたいですね!
正月三が日は箸をつけないのはなぜ!?
【京都市ほか】にらみ鯛
お正月に限らず、めでたい日の膳に並ぶ鯛の姿焼き。京都をはじめ西日本各地では、正月三が日は鯛に箸をつけずに飾りにするにらみ鯛という風習があります。三が日は「めでたい」の縁起にあやかり、4日目以降に温め直して家族で食べるのが一般的です。
また京都府南部にある久御山町の一部地域には、かつて近くに巨大な巨椋池(おぐらいけ)があり川魚の漁業が盛んだったことから、鯛ではなく鮒の煮付けをお飾りにする風習が今も残っています。
ハレの日にふさわしい丹後地方の「ごっつぉう」
【丹後地域】ばらずし
丹後地方の伝統食として知られるばらずしは、焼き鯖のおぼろに干し椎茸、錦糸玉子、かまぼこ、紅ショウガ、季節の食材をバラバラと散らした華やかな彩りが特徴。近年、デパートの催事などでも販売され、京都以外でも徐々に知名度が高まっています。
名前の由来には諸説ありますが、具材を寿司飯の上にバラバラと散らすから「ばらずし」と呼ばれるようになったとか。ほかにも、「バラテツキ」と呼ばれる平たいざるで寿司飯を混ぜたからという説もあります。
お正月をはじめ、結婚式やお祭り、誕生日など、お祝いの席には欠かせない丹後地方の郷土料理。「まつぶた」と呼ばれる木製の浅い木箱や取り分け用の「すし切り」と呼ばれるヘラなど道具にも特徴があり、押し寿司とは異なるやわらかな食感が魅力。使われる具材も地域や家々によって個性的。丹後人にとってハレの日の「ごっつぉう」として親しまれています。
噛めば噛むほど味が出る!港町ならではの縁起物
【伊根町】キリメイカ
舟屋で有名な伊根町では、おせちやお雑煮とともに、縁起物としてキリメイカ(塩イカ)と呼ばれる料理を食べる風習があります。
秋に獲れたアオリイカを、桶などで塩漬けにし、「かんかん(硬く)」になるまで3~7日ほど天日干し。その後、お正月まで冷蔵庫で保存するそうです。大晦日に冷凍庫から取り出し、半日ほど塩抜きをしてからゆがけば準備は完了。キリメイカは元旦に「切り始め」を行い、脚は神棚にお供えを、身は1人2切れずつお皿に取り分け、みんなで食べます。身の厚い時期に収穫したアオリイカは噛み応えも十分あり、少し塩辛い味わいがお酒に合うとのこと。海の京都・伊根町ならではのお正月料理ですね。
他にも、お雑煮に砂糖を入れるなど、伊根町ならではの正月料理にまつわる文化を下記記事で紹介しています。
雪深い美山ならではの冬のソウルフード
【南丹市美山町】ニシン漬け
一方、海から離れた南丹市美山町でも、魚を使った正月料理が古くから食べられています。それが、ニシン漬けです。
山あいの美山では、海の魚を手に入れるのが困難でした。特に大雪が降る冬場は交通が遮断され、魚を運ぶ商人の移動も難しい状況に。そこで貴重なタンパク源を確保するために美山の人々が正月前に準備するのが、身欠きニシンと大根を麹で漬けるニシン漬けです。
食べやすい大きさにカットした身欠きニシンと大根、ニンジン、昆布、タカノツメ、麹を桶に漬け込むこと10日以上。発酵が進めば、ほどよい酸味とニシン独特の風味を楽しめます。雪深い美山ならではのソウルフードです。
正月4日にいただお雑煮は白味噌ではなく…
【京都市ほか】水菜雑煮
「鏡開き」は1月11日という地域が多いですが、京都では4日に鏡開きを行う家も多く、その日の朝には鏡開きのお餅を焼いて水菜(京菜)を添えた水菜雑煮をいただく家庭もあるそうです。シャキシャキとした心地良い食感にあっさり仕立てのすまし汁が、おせち料理の濃い味に疲れた舌を癒やしてくれます。京都のお雑煮といえば白味噌仕立てが有名ですが、上品なすまし汁も美味ですね。
お雑煮代わりに食べるのはネバネバ食感のアレ!?
【南丹市・京都市京北地域】納豆餅
最後にご紹介するのは、南丹市や京都市京北地域などで食べられている納豆餅。実は、京都府は納豆発祥の地のひとつとされており、かつて常照皇寺で修行をしていた光厳天皇が、村人から献上された藁に包まれた煮豆を食べたところ、日が経つごとに糸を引くようになり、それが美味だったことがはじまりとされています。この納豆餅は、正月など祝いで食べられており、正月には納豆餅とみそ汁をお雑煮代わりに食べる風習が残っています。かつては、年の瀬になると、家長が家族の人数分の納豆餅をこしらえていたそうです。
京北町の納豆餅についてはこちらの記事をチェックください
納豆餅をはじめ、京都ならではのお雑煮を以前にまとめました。下記URLをチェックしてくださいね!
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