〈大和高田市〉奈良の元洋裁店を“人とまちが出会う場所”に/岡崎 剛史さん
ふるさと“大和高田”に人とまちが出会う場所を
奈良県大和高田市は江戸時代以来 、商業のまちとして発展してきた地域。綿花の取り引きを中心に、近現代では大日本紡績株式会社(現・ユニチカ株式会社)をはじめとする繊維業が栄え、全国各地から労働者が集まり、近隣の商店街などは大変賑わったといいます。
中でもJR高田駅の南西にある「天神橋筋商店街」はかつて “奈良の心斎橋” とも称されるほどの盛況ぶりで商都・大和高田の象徴でもありました。1977年のユニチカ高田工場の閉鎖以降、大型商業施設の台頭などで徐々に衰退し現在では営業店舗も数えるほどに。
そんな寂れゆく商店街にある元洋裁店「スガマ」を舞台にリノベーションまちづくりに取り組まれているのが大和高田市役所保険医療課で課長を務めている岡崎剛史さんです。
まちづくりへの志と公務員生活への危機感
大和高田市に生まれた岡崎さんは、「自分の手でこの町を良くしていきたい」という志を胸に2000年、大和高田市役所へ入庁。一方で職務は税務や法務支援、そして現在は保険医療課と内勤の職場を渡り歩いてきました。
活動のきっかけは40歳の頃。「このままいけば管理職に就く年齢になって、今まで事務方の仕事しかしてこなかったことに対し不安を感じました。定年まで働いても、仮に転職するにしても事務作業はできてもそれ以外にできることがない。そう考えた時に将来のためにアンテナを立てておこう、民間でもやっていける力を身につけようと思ったんです」
こうした危機感・不安から勉強を兼ねて、大和高田市に暮らす人々(プレーヤー)から話を聞きたいと2018年にインターネットコミュニティラジオ「タカダカRADIO」を開設。2年間で26人とのご縁を結びます。
また2020年には自身もプレーヤーとなり、居を構える広陵町で企業や地域団体への協力、クラウドファンディングを呼びかけ花火大会「トウジノハナビ」を開催しました。
何も決まってないけど、まずは拠点を手に入れた!
もともとリノベーションまちづくりに興味があったという岡崎さん。「リノベーションまちづくり」とは空間や人、その土地の歴史など地域に “今ある資源” を生かし、民間主導でまちのあり方を再構築するまちづくりの手法です。
岡崎さんは大和郡山市で開催されたリノベーションスクールなど、まちづくりに関する講演や勉強会に参加し、ノウハウを学び、2023年春、天神橋筋商店街と県道5号の交差点付近にあった元洋裁店「スガマ」の店舗跡を借り受けることとなりました。
「天神橋筋商店街を歩いていて『スガマ』のある路地がとても雰囲気があって拠点にいいなと思っていました。また偶然、市役所に勤務している方が所有している建物で、話をしてみたら快く貸していただけることになりました」
7年前にオーナーが他界し、閉業したままだった店舗には当時の布やマネキン、看板など懐かしい昭和レトロな品々がたくさん残っています。現在も地道に掃除と片付けを続けながら拠点整備をしています。
まち歩きイベントの開催とスガマのこれから
岡崎さんの新拠点「スガマ」で一体何をするのか-実はまだ何も決まっていません。
慎重派の岡崎さんにとって、計画を練っているうちにあれよあれよと時間が過ぎて結局やらないということになりかねないため、やらなければならない状況に追い込むために先に拠点を確保したんだとか。
スガマでの活動を前に、まずは大和高田のまちを知ってもらいたいという思いから活動の中で出会った、まちづくり事業を支援するNPO法人「自治経営」のサポートを受けて本年10月にまち歩きイベントを開催しました。
まち歩き・高田基督教会でのトークセッション・スガマでの懇親会の3部制で行われた同イベントにはのべ100人以上が参加。「行政で働く人や高田の人、いろんな人が集まり、繋がることができました。参加者の方にも喜んでもらえたようで嬉しいです」
「まだ何も決まっていないからこそいろんな使い方ができると思います。将来の可能性を閉ざされようとしている子どもたちの拠り所にしたり、また “繊維のまち” らしくファッションや芸術家のアトリエなど表現の場として活用したりこともできるかなと。いずれにせよ誰もがふらっと立ち寄れる、人とまちが出会う場所になれば」と岡崎さん。
スガマの第2章は始まったばかり。大和高田のまちにとってスガマはどんな場所になっていくのか。期待が膨らみます。
Profile
岡崎 剛史
OKAZAKI TSUYOSHI
大和高田市出身。1977年生まれの46歳。
2000年に大和高田市役所に入庁し、現在は保険医療課の課長を務める。
40歳の時、安定した公務員生活への危機感からプライベートで活動を開始。
2018年にはコミュニティラジオ「タカダカRADIO」を開設、2020年には広陵町内で「トウジノハナビ」を開催した。
2023年春から大和高田市内の元洋裁店「スガマ」を活用した人とまちが繋がる場所づくりに取り組む。
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