「女性だから」暗黙の了解が一番の敵。社会を変える第一歩とは
発展途上国の女の子たちが中学生くらいの年齢で結婚・妊娠……。日本で生きる自分に置き換えて考えると、そんなに若い年齢で結婚することは「ありえない」ことかもしれません。
しかし、世界ではひどい女性差別が行われている国・地域があるのです。
日本に置き換えてみると、「女なんだから」「高学歴の女性は結婚がしづらい」……こんなことを言われたことがある人もいるのではないでしょうか。
世界で起こっているのは、まさにそれと同じこと。
“女性だから”という理由だけで、何かを強制されたり、虐げられたりしても良いのでしょうか。この世界に生きる人は、性別関係なく平等でなければならないはず。
そういった、全女性の権利について考えるきっかけを与えてくれる日が3月8日の“国際女性デー”でした。
「令和」という新しい時代を迎えた今このとき、あらためて考え、次世代に受け継いでいきましょう。
「#MeToo」を発端に、より一層注目を集める
女性への差別撤廃や女性の地位向上を訴える記念日として、1975年に国連が制定した、国際女性デー。この日には、世界各地でさまざまな提言が行われます。
「#MeToo」を発端に女性の権利に注目が集まるいま、多くの著名人が国際女性デーに言及。日本でもより一層、関心を集めました。
そんな国際女性デーの前日に、貧困や差別のない社会を実現するために活動する国際NGOのプラン・インターナショナルが講演会を開催。
1部は国際協力・ジェンダー専門家でプラン・インターナショナル理事の大崎麻子さんによる講演会。
2部では作家・角田光代さんと、スポーツジャーナリスト・増田明美さんを迎え、「夢を実現するために」というテーマでトークイベントが行われました。
地球上の誰1人として取り残さないために
1部の講演会では、大崎さんによる“SDGs”についての説明から話が展開していきました。
“SDGs”とは、国連加盟193カ国が合意した、2030年までに達成すべき国際目標。Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称です。
“SDGs”が生まれた根底にあるのは「このままのやり方では、地球が持続していかない」という危機感。
今、この世界の社会、経済、環境はそれぞれ、さまざまな問題が発生し深刻な状態です。“SDGs”では、それらの問題を解決し、次の世代につなげていくため17の目標が設定されています。
理念は、“地球上の誰1人として取り残さないこと”。
現在、拡大している格差や不平等。それらを解消するためには、資源の使い方、ビジネスのやり方など、従来のシステムを考え直していかなければなりません。
リーダーとして思い浮かぶのはいつも男性
大崎さんは、会場の出席者に問いかけました。「“リーダー”といって思い浮かぶのは、男性ばかりではないでしょうか?」
教科書に登場した歴史上の人物……男性リーダーは多くの人物が思い浮かぶのに対し、女性の偉人としてイメージされるのはマザー・テレサ、ナイチンゲール、キュリー夫人の3人。
これまでは、社会の規範づくり・枠組みづくりとなる政治、科学技術、芸術、宗教などに関わっているのは、ほとんど男性でした。これからは「今の時代に求められているリーダーとは何かを考えていく必要がある」と指摘。
それを考えるとき、特にジェンダー平等が重要視されている背景について教えてくれました。
今までは、男性が中心になり決定していた、地域・国の政策、法律、税金の分配方法、防災などの事柄。
しかし、それでは多様な人のニーズがくみ取れないということが明らかになってきたのです。
世界が一丸となり女性リーダーをつくる必要がある
よりよい社会をつくるためには、男性も女性も一緒に考え決定していかなければなりません。
頻発する自然災害からの教訓
たとえば防災について。世界中で頻発する自然災害。日本も東日本大震災をはじめ多くの災害に見舞われてきました。被災するなかで得たのは、男性中心で考えられたインフラや施策では、さまざまな人のニーズを満たすのはむずかしいという教訓。
女性を巻き込み、性別関係なく男女一緒になって考えていかねばならないのです。
消滅自治体の問題
また、人口減が引き起こす“消滅自治体”の問題。これにもジェンダーが深く関わっているそう。自治体の高齢化が進んでいるのは、若い女性が外に出てしまい戻ってこないことが理由。
「女性だから仕事はない」「女性は家にいるものだ」などと言われ、苦しんだ女性たちが、自分らしく生きられる場所に移動してしまうのです。
ジェンダー問題を解決しない限り、自治体の消滅は避けられないでしょう。
これらのことを解決するため、社会に変化を起こす動きを先導するリーダーたちが必要だといわれています。
なかでも必要なのは、サイエンス・テクノロジー・エンジニアリング・数学……この4つの領域の女性専門家。薬の開発、防災のときのインフラのつくり方、都市計画などに多面的な視点が必要なのです。
女性のリーダーをつくるために
では、女性のリーダーを増やすためには何をすれば良いのでしょうか。プラン・インターナショナルが、その第一歩として行っているのは「女性の成功体験を増やす」お手伝い。
成功体験によって自信がうまれると将来につながります。まずは、小さな成功からで良いのです。
2部で登壇した角田さんと増田さんは、プラン・インターナショナルの活動に参加するなかで、成功体験を得た女性が自信を身につけ変わっていくさまを間近で見てきたそうです。
実際の事例をご紹介します。
事例1:知識・スキルを身に着けると自信がうまれる
増田さんが訪れたのは西アフリカに位置するトーゴ共和国。男尊女卑がまだ根強い国のひとつです。そんなトーゴで作られたのは、20ほどの女子だけのサッカーチーム。
最初は自信がなく、声も小さかった女子たち。ところが、試合に勝ち始めしばらくすると、どんどん大きな声で話すようになったそう。
自信を身に着けた彼女たちに将来の夢を聞くと「国のリーダー」「ジャーナリスト」などと答えたといいます。これは知識・スキルを身に着け自信がうまれ自尊感情が高まれば、将来につながることの証明です。
わたしたちも、自分ごとに置き換えられるのではないでしょうか。
事例2:「働いてお給料を得る」それだけで輝く女性たち
角田さんが訪れたのはシリアの難民キャンプ。物資もなく過酷な環境のなか、女の子たちへの教育も、もちろん行き届いていませんでした。
そこで、シリア難民の女性たちを教師として雇ったそうです。大変な環境でありながらも、生き生きして楽しそうな先生たち。
なぜかと言うと、働くことでお給料をもらえていたから。
角田さんは「働きお給料をもらう。それだけで、人はこんなにもキラキラ輝くのか」と印象的だったそうです。
わたしたちにとって、働いてお給料を得ることは当たり前。そこに喜びはないかもしれません。しかし、自分の働きが誰かのためになっていると考えると……?
それはとてもうれしいことですよね。
「女性だから」という暗黙の了解
早すぎる結婚、人身売買、暴力など、世界で起こっている女性についての問題。世界的に、男性と比べ女性の地位は低いといわれています。
「日本は男女平等」「虐げられた経験などない」そういう方もいるかもしれません。
しかし、角田さんは「日本にいるわたしたちだって、あなたは女性だからと言われたとき、すんなり受け取ってしまうことがあるはず」と指摘します。
「“女性だから……”そんな、暗黙の了解が一番の敵。社会が変わる第一歩として、“常に疑いを持ち続けること”が大切」だと訴えました。
ジェンダーギャップを完全に解消するにはあと108年かかるといわれています。次世代の女性たちが幸せに生きられるかは、“今の時代を生きるわたしたち”次第だといっても過言ではありません。
“女性だから”という暗黙の了解に疑いを持つこと……それなら今すぐにでもできるのではないでしょうか。
元号が変わり、新たな時代を迎えた今だからこそ、あらためて考えてみては?