神戸の新たなお出かけスポットとして注目を集めているのが、新港エリアに誕生した劇場型アクアリウム「átoa(アトア)」。主役の魚たちが、大小さまざまな形をした水槽に息づき、照明や音響、アートと一体になって作り出す世界は、なんとも幻想的で、これまでの水族館ではなかったこと。今夏からは生きものとの体験プログラムも充実し、より五感を刺激します。そんな「átoa」の8つのゾーンの魅力を、発見(DISCOVER)と体験(FEEL)に分けて徹底ガイド!
3 SPOTS
見どころ&楽しみどころ
宇宙を遊泳しているのか、それとも深海にいるのか。惑星を思わせる水槽で泳ぐ魚たちと出会う空間は、どこまでも幻想的。主役は、国内最大級を誇る、直径3メートルの球体水槽「AQUA TERRA(アクアテラ)」。これを中心としたレーザーパフォーマンスは、360度全方位からも光とミストが降り注ぎ、無数の星と光のベールに包まれる。これが“劇場型アクアリウム”なのかと驚嘆してしまうはず。
半球体の水槽は、360度どの角度からも観られるのがポイント。ライトアップされた半球体の水槽が弧を描くように展示されている景色は、とても幻想的で神秘的!
ここは日本の伝統芸術や最先端技術で演出した和空間。コイや金魚など日本に馴染み深い魚が優雅に泳ぐ姿は、まさに雅びやか。日本の四季を演出した光の切り絵作家 酒井敦美氏による映像パフォーマンス「にほはしき時の巡り」は必見。ガラス床水槽「MINAMO(ミナモ)」の下を泳ぐ無数のコイたちが艶やかに泳ぎまわる和空間。これもまた、劇場型アクアリウムの真骨頂。
金魚は夏の風物詩だけれど、ここなら春夏秋冬と移り変わる季節の中で、趣を変える金魚の優雅な姿が楽しめる。上から観て姿の美しさを、横から観て動きの愛らしさを愛でるのはいかが?
やわらかな光の中で、淡水に生息する魚やアートを感じるような美しい模様の魚がゆったりと泳ぐ、やすらぎのゾーン。入ってすぐに、上部が大きくカーブしたユニークな水槽があり、体長約1.4メートルの淡水魚ピラルクや、カピバラがほのぼの泳ぐ姿が見られることも。ライブラリーや生物の標本がのぞける顕微鏡などもあって、生きものへの興味が増す。
顕微鏡をのぞき、倍率を変えながら標本を見ていると、新たな発見が。気づけば、生物や植物、海ごみ啓発展示などあらゆる標本を見ていて、いくつになっても好奇心は刺激されるものだと、しみじみ。近くにはライブラリーもあって、興味は尽きません!
入ってすぐのゾーン。真っ暗な洞窟の中で光る天井の魚群照明が、壁面の鏡に乱反射。万華鏡のようにキラキラ輝く魚に包み込まれるかのように、洞窟の奥に誘われ、いざ「átoa」の世界へ。
洞窟内にある天井の魚の群れをイメージした照明は色とりどりに変化。しばし立ち止まって、その光景を眺めていると、早くも幻想的な世界に引き込まれ、後へと続く7つのゾーンへのワクワク感が高まってくる。奥に向かって、美しい色を放つ魚たちがお出迎え。
お腹の赤色と金粉をまぶしたような鱗が美しいピラニア・ナッテリー。その鋭い歯で肉を食いちぎる様子から、“殺人魚”などと言われ、怖いイメージのあるピラニアだが、意外にも臆病だから群れで生活しているのだとか。
尾ヒレをフリフリと振りながら泳ぐ様子が愛らしい熱帯魚グッピー。メスよりオスのほうが、姿形が美しく、オスは、一日の大半をメスを追いかけることに費やしている。
いちばんに迎えてくれるのは、アマゾン川の上流域に暮らす、熱帯魚カーディナルテトラ。青と赤のコントラストが美しく、メタリックブルーのラインは構造色と呼ばれるもので、角度によって色が違って見える。
4 SPOTS
見どころ&楽しみどころ
海の中から一転、哺乳類や両生類、爬虫類などに出会える樹海の森をイメージしたゾーンへ。流木の大樹にオレンジの照明が木漏れ日のように注ぐ精霊の森に足を踏み入れると、そこにはゾウガメがゆったりと散歩したり、ワラビーが寝ていたりして、おとぎ話の世界に紛れ込んだかのよう。ゾウガメにエサをあげる、甲羅に触れるなど、ほかにはない体験も待っている。
アルダブラゾウガメのお散歩姿や、パルマワラビーのもぐもぐタイムに目を奪われがちだけれど、陸上の植物と生きものが共存したアクアテラリウムも圧巻! 5年後に来たら、この変化する自然の水槽はどんな景色になっているんだろうと思いを馳せてしまう。
水がゆらゆらとゆらいでいるかのような青いゆらぎ照明と、ところどころでふと漂う海を連想させる香り……。まるで海の中に迷い込んだかのような感覚で、生きものたちと遭遇できる空間。大小いくつも並ぶ円筒型の水槽には、個性的な形やユニークな行動をする魚がいて、じっと眺めていると気持ちがなごむ。
真珠取り出し体験の楽しみは、アコヤ貝を選ぶところから。どんな真珠が入っているかは貝殻からは予測不可能だそうで、真珠袋を探っているときからワクワク。大粒でも小粒でも、取り出した瞬間の輝きには、驚くばかり!
館内から一転、空と水と緑が広がる屋外へ。そこは、太陽が降り注ぐ青空のもと、コツメカワウソ、フンボルトペンギン、カピバラといった生きものたちが、水辺で気持ちよさそうに遊ぶ、開放的な癒やし空間。神戸港のダイナミックな景色と、爽やかな潮風を感じながら、彼らの愛らしい様子を眺めていると、時が経つのを忘れてしまいそう。
「ピラクル餌やり体験」はちょっとエキサイティング! こんな近くで餌をあげるのは初めてで、ドキドキしました。大きい魚が水しぶきをあげるその姿はとってもワイルド!
館内の8つのゾーンを探検したら、最後はガーデンカフェスタンド「átoa cafe」でひと休み。「SKYSHORE 空辺の庭」を見渡せるカフェでは、「átoa」に暮らす生きものやアートにちなんだフードやスイーツ、ドリンクがスタンバイ。どれもキュートで、食べてしまうのが惜しくなる。ルーフトップの「展望テラス」へ足を延ばせば、神戸ポートタワーやハーバーランドなど神戸のランドマークが広がる港の景色が眼前に。
DATA
4F
日本ではすり身や蒲鉾に加工されることが多いサメ肉ですが、実は白身魚のような味わいで美味! タンパク質も豊富でヘルシーですよ。この機会にトライを!
3階にあるこちらは、生きものを五感で楽しむユニークなゾーン。額装された作品には、生きものの匂いや音の仕掛けなどが隠されていて、楽しみながら彼らの存在を感じることができる。水槽には、視覚を刺激する美しい色の生きものが暮らしている。
動物たちのお尻の匂いを嗅ぐことができるアート。お尻の写真や模型が額装されていて、鼻を近づけると……。真ん中にドンと額装されているのはペンギンのお尻。ちなみに、いちばん臭いのは、左下にあるトラ。
視覚を刺激してくれるヒメハナギンチャク。体内に蛍光タンパク質を持っていて、光が当たると自然に発光。粘液と刺胞の糸で砂の中に管をつくりすむ。触手は紫系とオレンジ系の2系統あり、その触手でプランクトンなどを捕えて丸飲みする。
私たちがサンゴと聞いて思い浮かべるのも、ほとんどこのミドリイシの仲間。オスとメスの生殖器官をひとつの体の中にもっている雌雄同体で、褐虫藻と呼ばれる植物プランクトンを体内に取り込んで、生きている。
体にある無数の白い斑点が“天の川”のように見えることからその名がついたアマノガワテンジクダイ。メスが卵を産むと、オスがそれを独り立ちするまで口の中で守る小型の魚。独り立ちすると、ウニのトゲの間に隠れて生活する。
「átoa」が入る神戸ポートミュージアムの外観は、一見、無機質に見えて、実はとてもロマンティック。神戸市がある六甲の地は、遥か100万年以上前、海底から大地が隆起して水に浸食され、形作られたとか。地層のような土壁の建物は、太古に誕生したそんな神戸の姿を、六甲山と瀬戸内海から運んだ土砂で表現している。その2階から4階に、劇場型アクアリウム「átoa」が入る。
<イベント情報>
2023年8・9月
・真珠の取り出し体験(~8月31日)
・スノードーム制作(~8月20日の土日、と8月14~16日のお盆期間に実施)
・「SAKANA BOOKS」プレゼンツ「FOYERライブラリー」(~8月31日)
・絵本読み聞かせ(~8月27日の土日 ※但し、8月12・13日を除く)
・みなと神戸 夏夜市(〜9月3日の土日と、8月11日、14~16日)とイルミネーション(~9月3日)
兵庫県神戸市中央区新港町7-2
TEL: 078-771-9393
開館時間:10:00~20:00(最終入館19:00)
休館日:なし 入館料:大人1名¥2,400(※特定日は料金・入場時間に変動があります)
アクセス:各線「三宮駅」から徒歩18分。ポートループバス「新港町」下車すぐ。
https://atoa-kobe.jp/
撮影/吉村規子 取材・文/齋藤優子