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お花見前に知っておきたい!樹木医に聞いた桜の基礎知識

2023.03.16

桜シーズン到来!本格的な春の訪れに心も自然とウキウキしますね。
それにしても、日本ではなぜこんなにも桜が愛されているのでしょう。 京都にはなぜ桜の名所が多いの? なぜ、お花見と言えば染井吉野(そめいよしの)なの?京都で見られる桜の品種ってどんなものがあるの??……などなど、今回は京都府立植物園の樹木医・中井貞さんに、桜に関する「なぜ?」を色々聞いてきました!

京都に桜の名所が多いのはなぜ?

そこには「都」だった歴史と深い関係が…

photolibrary(https://www.photolibrary.jp

京都の桜の名所といえば、祇園白川や嵐山、哲学の道に平野神社、仁和寺、平安神宮…と、数え切れないほどたくさんありますよね。なぜこんなにも「桜の名所」といわれる場所が多いのでしょうか。その理由を伺うとやはり京都が「都」であったことが大きく関係しているそうです。

日本には山や田んぼの脇に自生する野生種の桜(主にヤマザクラとエドヒガン)があり、何百年も生きる古木や巨木として人々に親しまれてきました。やがて都ができるようになると、人が桜を植えて観賞するという文化が根付きます。京や江戸などの都市部では、お寺や神社に桜が集められ、そこを名所にして人々が集まって観賞するようになったのです。
次第に人々は野生種の桜を交配させて品種改良するようになります。変わった桜や珍しい桜が権力者の元に集まるようになったため、1000年もの長い期間都であり続けた京都には、それだけ桜の名所が多いということなのだそうです。

特に園芸文化が発展した江戸時代は、桜に限らず各藩がこぞって珍しい植物を栽培し自慢することが一つのトレンドでした。桜も多用な品種が生まれ、観賞されるようになったという歴史的な背景があるそうです。

野生種と栽培品種の違いとは?

染井吉野や枝垂れ桜も栽培品種!?

(左上)ヤマザクラ、(左下)オオシマザクラ、(右)エドヒガン

ここで、知られざる桜の基礎知識をご紹介!桜には、野生種栽培品種の桜の2種類があることをご存じですか? 「野生種」には10種の桜がありますが、特に有名なのがヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンの3種です。
なかでもオオシマザクラは栽培品種をつくる際に重要とされている品種で、他の桜にはあまりない“香り”が出るのが特徴。よくある“桜の香り”とは、このオオシマザクラの香りのことだったんですね。ちなみに桜餅に使われる塩漬けの葉にも、オオシマザクラの葉が使われています。

(左)染井吉野、(右)枝垂れ桜

人間が生活する里の空間で、観賞目的のために栽培・植栽されている桜を「栽培品種」といい、里桜とも呼ばれています。交配や枝変わりの結果、花びらの数が増えたり、花そのものが大きくなったり、これまでにない色の花びらができたりしてきました。たとえば「桜」といえば、染井吉野(そめいよしの)や枝垂れ桜(しだれざくら)、八重桜(やえざくら)などを思い浮かべる人が多いでしょうが、これらは全て栽培品種のひとつなんです。
※野生種はカタカナ、栽培品種は漢字で表します。

なぜ、お花見といえば染井吉野(そめいよしの)なの?

その歴史は意外と新しい?

お花見といえば、染井吉野を連想しますよね。では、なぜ、日本人がイメージする桜は、染井吉野なのでしょう?

実は、染井吉野の歴史は意外と新しく、江戸時代の終わり頃、江戸郊外の染井村(現在の東京都豊島区)でオオシマザクラとエドヒガンを親木として作られた栽培品種が染井吉野でした。品種の歴史としては浅いのに日本中で「お花見といえば染井吉野」となっているのには、明治維新が大きく関係しています

というのも、江戸時代までは武家屋敷や神社仏閣に集まっていた桜が、武家の消滅や廃仏毀釈によって、次々と伐採されていったのです。栽培品種の桜は自然の桜ではないので、種から新世代とはならず、人の手で接ぎ木などをして残していかないといけません。何百年と培ってきた桜の栽培品種文化も一旦、衰退してしまいます。

そんな時代に生まれた新しい品種・染井吉野。東京を拠点とする新しい明治政府は、東京生まれのこの新しい桜を全国の学校や公道、神社などの公の場所にふさわしい樹木として植栽を進めました。他の品種と比べて染井吉野は木の成長が圧倒的に早く全国に広がっていったため「桜といえば染井吉野」というイメージが定着したのです。
日本の花見文化は有史以来ありますが、お花見=染井吉野の歴史は、実はつい最近の文化だったんですね。

京都でも染井吉野は多くの場所で見ることができますが、伝統文化と歴史が残るまち・京都で見られる桜の品種をいくつかピックアップしてご紹介します。

京都で見られる桜の品種

有名なあの桜から知られざる品種までご紹介!

枝垂れ桜(しだれざくら)

一般的に桜の木は上に伸びて枝葉を広げていきますが、野生種エドヒガンの中で伸びた分だけ垂れるような特徴のある個体を選んで栽培したものが枝垂れ桜です。花の形はエドヒガンと同じですが、植物ホルモンの影響で枝垂れる形になりました。京都では枝垂れ桜の名所として、円山公園や醍醐寺が有名です。

市原虎の尾(いちはらとらのお)

直立した枝に白い八重の花が咲くという枝ぶりが虎のしっぽに見えるという品種です。京都において桜の保存に大きな役割を果たしている「佐野家(現代も続く桜守の家系)」に見出され、世に広がっていきました。京都府立植物園や京都御苑などで見ることができます。

太白(たいはく)

栽培品種の中でもいちばん大きな花(直径が5センチ以上)が咲く品種です。日本で栽培されていたものが一度は絶滅したそうですが、1932(昭和7)年、学者であった鷹司信輔氏がイギリスに輸出されていたものを逆輸入して「太白」と名付けたそうです。

普賢象(ふげんぞう)

非常に特徴的な八重桜で、葉化しためしべが2本あるのが特徴です。この2本になっためしべが象の牙のように見えることから、普賢菩薩が乗っている象に見立てて普賢象の名がつきました。花の咲く時期は少し遅く、4月中旬頃です。京都では千本ゑんま堂(引接寺)が有名です。

鬱金(うこん)・御衣黄(ぎょいこう)

ちょっと珍しいのが、黄色の桜である鬱金(うこん)と、緑の桜である御衣黄(ぎょいこう)。葉緑体の影響で花の色が変わっており、一見すると桜に見えませんが、これも桜の品種なんです。

ちなみに、これらの桜の品種全てを見られるのが、京都府立植物園。なんと180品種もの桜を観賞できるそうで、中井さんによると「バックヤードで保有する品種を加えると200以上となり、国内随一の桜の名所であると自負しています」とのこと。

「植物園は『生きた植物の博物館』としての役割を担っています。桜についてもその多様性や歴史、文化まで含めた奥深さを知っていただけるようにしています。早咲き品種は2月下旬から、遅咲きのものは4月下旬までと、品種によって開花期も様々。長期間にわたって桜を楽しむことができます。」(中井さん)

桜の季節は特にですが、桜以外の樹種や草花も豊富なのが府立植物園の魅力。訪れる度に違った変化を楽しめるのがうれしいですね。

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京都府立植物園 4月~5月の行事予定
展示会・行事名 会期 概要 募集人員 場所
春蘭展 3月10日(金)~3月12日(日) 共催:東洋蘭洛風会 9時~17時(最終日は16時まで)
シュンラン約100点及び席飾り5席を展示(販売あり)
展示室
桜ライトアップ 3月25日(土)~4月9日(日) 夜間開園して、桜林を中心として約300本の様々な品種のサクラをライトアップ。
日没から午後9時まで(入園は午後8時まで)
観覧温室は、午後5時30分~9時まで無料開室(球根ベゴニア展開催中)
桜林他
つばき展 3月25日(土)~3月26日(日) 共催:(財)京都園芸倶楽部
京都の名椿などツバキの切り枝展示
展示室・多目的室
京都盆栽展 3月31日(金)~4月3日(月) 共催:京都盆栽会
盆栽約30席、80点を展示(販売あり)
展示室
しゃくなげ展 4月7日(金)~4月9日(日) 共催:日本ツツジシャクナゲ協会京都支部
シャクナゲ類、約100点を展示(販売あり)
展示室
サトザクラ展 4月14日(金)~4月16日(日) 植物園内にあるサトザクラを中心とした切り枝を展示
サクラ文化の紹介
展示室
桜散歩 4月14日(金)~4月16日(日)

園内のサクラを職員が案内
植物園会館前集合 4/15~4/17  

午後1時から1時間程度

先着30名 園内
ものづくりGardenマルシェ&music garden 4月16日(日) アクセサリー、お菓子、工芸品など手作り品の店舗が大集合。ミニコンサートも同時開催
9:00 ~16:00
エコ路地、北山門広場周辺
フクシア展 4月21日(金)~5月7日(日) フクシア約180品種200鉢を展示 観覧温室・ジャングル室
エビネ展 4月29日(土・祝)~5月3日(水・祝) 共催:京都エビネ会
エビネ類約200点を展示(販売あり)
展示室
山草野草展 4月29日(土・祝)~5月5日(金・祝) 共催:京都山草会
山草、野草類約500点を展示(販売あり)
植物展示場
イワチドリと小町蘭展 5月4日(木・祝)~5月5日(金・祝)  共催:近畿小町蘭会 9時~17時(最終日は16時まで)
イワチドリ約200点、小町蘭(ネジバナの変異種)約50点、その他野生蘭50点を展示(販売あり)
展示室
万年青と古典植物展 5月6日(土)~5月7日(日)  共催:日本おもと協会近畿支部
万年青を中心とした古典植物約300点を展示(販売あり)
展示室
バラ切り花展示 5月12日(金)~5月15日(月)  日本ばら会京都部会(12日~13日)、京都ばら会(14日~15日)による切り花コンテスト(会期中一般公開) 12日、14日は12時~17時、13日、15日は12時~16時 多目的室
ばら園散歩 5月13日(土)~5月14日(日) 夕暮れに染まるばら園内を職員が案内
17:00~17:45
先着30名 ばら園
サボテン展 5月19日(金)~5月21日(日)  共催:京都シャボテンクラブ
サボテン、多肉植物約300鉢を展示(販売あり)
展示室

府立植物園では、4月~5月にかけて、桜のライトアップをはじめとした多彩なイベントが開催されます。4月の桜から、つばき、しゃくなげ、バラと、多彩な花が咲く季節。気になる行事があれば、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

最後に、中井さんに、京都府立植物園以外でおすすめの桜スポットを3つご紹介していただきました。

樹木医・中井さんがおすすめする京都の桜スポット

京都市内の厳選スポットをご紹介!

常照皇寺(京都市右京区)

「皇室所縁の歴史ある寺院で、庭にある桜も、たとえば『九重桜』(ここのえざくら)『御車返しの桜』(みくるまがえしのさくら)『左近の桜』(さこんのさくら)といった、御所や皇居に由来する特別な名木を観賞できます。京都市内の北部に位置し、桂川の源流やよく手入れされた北山杉など、古き良き田園風景もたいへん魅力的。都市部では味わえない、周辺環境も含めたのどかな雰囲気を楽しめます。」(中井さん)

仁和寺(京都市右京区)

「染井吉野や枝垂れ桜とともに、遅咲きで有名な『御室桜(有明など)』で有名。周辺に世界遺産の寺院や風光明媚な散策エリアが点在しており、桜観賞だけでなく充実した京都探訪が叶います。染井吉野など一般的に知られる桜の開花期より少し遅れて見頃となることや、樹高が低いため私たちの目線で花を観察できるのも特徴です。」(中井さん)

知られざる桜の歴史や豆知識、いかがでしたでしょうか。
ぜひお花見の時に話題にしてワイワイ盛り上がってください^^

■■SPECIAL THANKS■■
今回お話を伺った京都府立植物園 樹木医の中井貞さん

■■INFORMATION■■
京都府立植物園
京都市左京区下鴨半木町
075-701-0141
開園時間:9時~17時(最終入園16時)
入園料:大人200円、高校生150円
※中学生以下、70歳以上及び障がい者の方(介護者含む)は無料(要証明書提示)
休園日:12月28日~1月4日
アクセス:地下鉄北山駅下車3番出口からすぐまたは北大路駅下車3番出口から東へ徒歩約10分、市バス停「植物園前」下車徒歩約5分

www.pref.kyoto.jp

<中井さんおすすめの桜スポット>
平野神社

電話:075-461-4450
所在地:京都市北区平野宮本町1
拝観時間:6:00~17:00(お守りは9:00~、桜の時期は~21:00)
拝観料金:参拝無料
交通アクセス:市バス停衣笠校前から徒歩3分

常照皇寺

電話:075-853-0003
所在地:京都市右京区京北井戸町丸山14−6
拝観時間:9:00~16:00
拝観料金:志納金500円程
交通アクセス:西日本JRバス「周山」下車(JR京都駅から周山まで1時間半程度)、ふるさとバス乗り換え約15分「山国御陵前」下車 徒歩約10分

※※常照皇寺へバスを利用して訪れる方へ※※

西日本JRバス、ふるさとバス共に本数が少なく、曜日によってもダイヤが異なるため、公共交通機関を利用する場合は下記URLを参考にあらかじめ1日のスケジュールを立ててから訪れることをおすすめします。

西日本JRバス(高雄/京北線)

きょうと京北ふるさと公社 ふるさとバス(山国・小塩方面)

仁和寺

電話:075-461-1155

所在地:京都市右京区御室大内33

拝観時間:9:00~最終受付16:30

拝観料金:御室花まつり特別入山料(3月中旬頃~5月上旬頃)500円、御所庭園拝観800円、霊宝館500円

※高校生以下は次世代への文化支援として、特別入山料・御所庭園拝観・霊宝館入館料は無料となっています。

無休(霊宝館は特別期間のみ公開)

【参考文献】
『桜』(勝木俊雄 著/岩波新書)

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